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新規原料:微生物のポテンシャル

飼料の新規原料としての微生物のポテンシャルを考える上で、今回紹介するレビューは基本的な情報を与えてくれるものと思います。食品や健康への利用についての記述が多くなりますが、微生物活用のカテゴリーや歴史に始まり、微生物の種類、効果、栄養、タンパク源や代替肉への利用、機能性原料の製造、課題などについて、すごく簡潔にまとめ説明してくれており、飼料分野の方々にも大変参考になる内容になっています。 また、スタートアップや企業が、活用している微生物の種類や彼らの製品とともに、リストアップされている表もあって、現在、世界で、どのようなプレーヤーがどのように活動しているのかを知るための良い資料にもなるでしょう。 これからますます活発化してくる新規原料の探索。興味のある方は、ぜひご一読ください。 The microbial food revolution - Nature Communications In this Review article, the authors discuss the potential of microorganisms as a solution to the challenges faced by our food system. Engineered microorganisms can be used to produce enhanced foods and ingredients in a sustainable manner. The technical, economical, and societal limitations are also discussed together with the current and future perspectives.

昆虫とともに

新規飼料原料の多くが魚粉代替としてうたわれていますが、今般では魚粉だけではなく大豆やコーンといった植物性タンパク源についても価格と量の両面で厳しい状況が続き、さらに今後の人口増加やそれに伴う飼料需給量の増大が必至であることを考えると、副原料や微量原料といったところまでの代替を考えていく必要があるでしょう。 さて、新規原料としてこの記事でも紹介されている昆虫が最近よく登場します。しかし、昆虫が他の原料よりも栄養価が高いというわけではなく、多くのタンパク源を代替できるというわけでもありません。他の原料と同様に、昆虫メインでは飼料として機能しないのが現実であり、他の既存原料や新規原料との最適な組み合わせを見つけることが、逆に昆虫を飼料原料として活用するために大切です。 なお、欧州で養魚飼料への昆虫利用が比較的進みやすい理由の一つは、ニワトリなどの人間の食用に生産された動物からの副産物よりも、昆虫の印象が良いことが挙げられます。日本でもそういった感覚があるでしょう。しかし、動物の副産物はそれを生産するための特別なエネルギーのインプットなしに人間の食生活から必然的に産れてくるものです。このような、もともとサステナビリティに優れた原料があることも忘れず、その養魚飼料への利用性を質および量的に高めることにも官民で積極的に投資していくべきであり、これが昆虫のような新規原料の利用性も高めることにもつながるはずです。 昆虫は優れたポテンシャルのある原料です。しかし、どのような原料でも「協力」して飼料になります。 丸紅、昆虫を養殖魚の餌に - 日本経済新聞 丸紅は栄養価の高い昆虫を使った養殖魚向け飼料の研究開発に乗り出す。フランスのスタートアップと提携しマダイなど日本に合う養殖用飼料を共同で開発する。魚の養殖で使う飼料の魚粉や大豆かすの輸入価格は、原材料の高騰などで上昇している。世界人口の増加で食糧難も懸念される。魚粉に使うイワシなどと比べて安定調達できる昆虫を、代替飼料として活用する動きが広がってきた。フランスのスタートアップ、インセクトと同社

魚粉代替の向こう

魚種や原料は異なりますが魚粉はペルー産だけでなく、アメリカ産、東南アジア産、ヨーロッパ産、アフリカ産などいろいろあります。現在の問題はこれらすべてで高く推移していることであり、よほど在庫状況や購買ポジションが良い商社や飼料メーカーでない限りはどこも苦しい状況が続いているといえるでしょう。 国産は比較的安定しているとも聞きますが、中長期的に考えると国内外の産地を問わず魚粉という飼料原料をいつまでも主要タンパク源と捉えるのはやめて、かといって、魚粉を減らして他の原料で埋める(魚粉代替)ということでなく、種々の原料を組み合わせて飼料のタンパク質を確保するコンセプトを持つことが大切なのだと思います。 魚粉は大変優れた原料であるのは事実です。しかし、家禽、微細藻類、シングルセル、昆虫などポテンシャルをもつ原料が身近にあるにもかかわらず、それらの量的(利用)および質的(品質)課題の解決に向けた理解や投資が進んでいないという事実も認識し対応していく必要があります。 魚粉、3割弱値上がり 養殖魚のエサに使う魚粉に先高観が出ている。原料となるカタクチイワシの漁獲量が減る見通しだ。漁獲枠は1割強ほど拡大したものの、漁期開始日の遅れが響く。ペルー産魚粉の国内価格は、上級品で1トン28万~28万5千円と前年同期比で3割弱ほど高い。魚粉価格の高値圏が続けば、養殖事業者が出荷する魚への価格転嫁を本格化する可能性がある。世界最大の魚粉生産国である南米ペルーでは毎年、夏(11月中旬~1月下旬ご

新規原料の活かし方

養魚飼料の新規「原料」について日本経済新聞が紹介しています。魚粉代替にフォーカスした内容ですが、今では逆にその呪縛にとらわれず新規「飼料」そのものの開発を行うことの重要性が益々高まってきていると私は感じています。新規原料も魚粉も飼料というパズルを構成する一つのピースでしかありません。魚粉以外の既存の原料や他の新規原料といった異なるピースとの組み合わせを常に考慮に入れて粘り強く新規飼料の開発に向けた検討をしていくことが大切ではないでしょうか。魚粉の二倍の価格を持つピース単独で魚粉代替のみを目指すのではなく、特徴のある種々のピースを組み合わせることによって栄養と同時に価格の適正化を図るプラクティカルなパズルの完成を目指すことが望まれます。このような考えなしに新しいピース(新規原料)を活かすことは難しいでしょう。 DIC、藻を水産養殖飼料に 色素原料の残りかす活用 水産養殖用の飼料で、現在主流の魚粉を使わない代替材料の活用が広がってきた。DICは自社で生産する藻の一種「スピルリナ」の残さ(残りかす)の活用検討を始めた。スタートアップなどが手がける虫を使った飼料も登場している。魚粉価格は需要拡大や漁獲量減少の影響で高騰している。環境や人権に配慮した水産物の需要も高まるなか、代替飼料が注目されている。マグロ遠洋漁業で有名な鹿児島県いちき串木野市。9月、水産飼

サバではだめで、アジでなければ「いや!」

ペンギンやカワウソのもともとの食性について詳しくは知らないですが、サバではだめで、アジでなければ「いや!」ということのようです。確かに両魚種で味や食感が異なるでしょうから、そのような違いがペンギンやカワウソの嗜好性に影響を与えているのだと思いますが、大きくはサバに対して慣れていないことによるものでしょう。 これらの動物と魚を同列にはちょっと無理があるかのかも知れませんが、例えば、養殖クロマグロはサバを好む傾向にあるものの、慣らしさえしていけばアジもまぁまぁ食べるようになりますし、イカに対しても初めは吸盤が顔(マグロの)に触れるだけでかなり嫌がり咥えることもしませんが、何かの拍子にその味をしめると大好物になります。 このようなことは養魚用配合飼料についても言えることで、動物性・植物性タンパク源の種類や配合割合などが変われば、飼料に対する魚の嗜好性も「不慣れ」なためにガラッと変わり、極端なケースでは「全く食べない」ということもありますが、プロフェッショナルな養魚家は新旧飼料を混合しながら時間をかけて馴致したり、そもそも内容が違う飼料であれば給餌方法や頻度にも異なる工夫が必要であることを理解していたりして、上手に対応します。原料の不足や高騰で飼料の内容に大きな変化が起こっている今日、これまでこのような経験を積んできているのか?の差が養殖効率に大きな影響を与えているはずです。 ペンギンもカワウソも慣れればサバを食べるでしょう。少なからず食べる個体がいることも、私の楽観的な予想を支えてくれています。食べない個体に「美味しいのかな?」と思わせるもの大切です。 物価高で水族館のペンギンに異変「アジがいい」エサ代替品のサバには目もくれず(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース  止まらない物価高。苦しんでいるのは人間だけではありません。水族館ではペンギンにも異変が起きていました。  箱根にある水族館。ここでも物価高の影響が。ペンギンなどの餌(えさ)、アジです。3割ほど値

代替原料からの脱却

魚粉の代替タンパクである大豆がタイトになり、魚粉が大豆の代替タンパクになるような勢いでしたが、このように魚粉と大豆の両方がタイトになる時代にあって、代替タンパクとうい言葉(もの)自体に意味がなくなってきたように感じます。これからの時代、何を何で代替するということではなく、どのタンパク源、どの油脂源であっても、飼料(エサ)というパズルを完成するために不可欠な一つ一つのピースであると認識することが大切です。そして、これらのピースには決まった形はなく、それぞれのピースには互いに様々に組み合わさってパズルを完成させるポテンシャルとフレキシビリティーがあって、これらの点を的確に描き出せる基礎研究の重要性が益々高まってくるでしょう。 過去のブログ「 養魚飼料原料としての大豆 」、「 飼料原料のフレキシビリティ 」などもご参考ください。 魚粉の国際価格が4年ぶり高値 中国で需要増 養殖魚のエサとなる魚粉の国際価格が4年ぶりの高値をつけている。割安な飼料原料である大豆かすの価格が中国で高騰し、魚粉の需要が伸びた。原料となるカタクチイワシの漁期が、資源保護のために中断する可能性も意識されている。日本の輸入価格は円安や海上運賃高騰の影響も受ける。クロマグロやブリの養殖コスト増加は必至だ。4月時点のペルー産魚粉の国際価格は、日本で使う上級品が1トン1800ドル前後。2021年夏

ISFNFとコロナと若い人

6月にイタリア・ソレントで開催される 第20回ISFNF (XX INTERNATIONAL SYMPOSIUM ON FISH NUTRITION AND FEEDING)の プログラム が公開されました。生理と栄養要求のセッションが2つ、育種と仔稚魚栄養のセッションが2つ、飼料添加物と機能性飼料のセッションが2つ、栄養学的給餌戦略のセッションが2つ、栄養と魚類健康のセッションが2つ、飼料製造と養殖生産物の品質のセッションが1つというようななかで、代替タンパク源と代替脂質源については比較的多い3つのセッションで構成されています。演題をみますと現在の潮流をダイレクトに反映して、養殖副産物由来の油脂の利用性、微細藻類油脂による魚油の完全代替、昆虫ミールと油脂、そしてその昆虫のエサや、酵母タンパク、陸上動物タンパクなどに関する発表であり、もはや大豆、トウモロコシ、小麦など植物性タンパクのお話はほとんどでてきません。自国での養殖のエサ(の原料)は自国で賄うという急激な流れの一端でもあり、世代の差を感じている時ではないということなのだと思います。 一方で別の観点から気になるのは、日本からの参加者がみあたらない点です(プログラム上では発表者の氏名でしか判断ないのですが)。大学や公的機関の教員、職員もそうなのですが、それよりもむしろ、院生、博士研究員、企業のなどの若い人がこのような場に来ることができなくなっていることが心配で、日本における魚類栄養・飼料の研究分野の将来を考えればかなり痛いように感じます。おそらくコロナの関係で仕方がないところもあったのでしょうが、ルールを守りさえすればおおよそ自由に海外渡航ができるのが現状ですし、これは誰もがやっていることでもあって、もちろん若い人達も充分に大人なので出来る(ように努めなければならない)はずです。そこでの彼女/彼らの経験と、そこで築いた人とのつながりが、10年後のあなたの会社、機関、大学の発展と、そしてもちろん彼女/彼ら自身に必ず活きると断言できます。ですので、誤解を恐れずに言えば、「コロナだからやめろ」というようなことではなく、abstractは締め切っていますので発表は無理なのですが、「せめて参加するだけでも」と思っている若い人がいるのであれば、ぜひ行かせてあげましょう。彼ら/彼女ら自身の研究・勉強人生でもあります。 大...

養殖と養魚飼料のバージョンアップ

出荷前の半年を無魚粉化した飼料で仕上げる取り組み、とても興味深いですね。低(無)魚粉飼料の給餌は魚粉が多い一般的な飼料の給餌とは異なるストラテジーが必要なので、大変工夫されているのだと思います。ウミトロンさんとも協働されていましたので、これまでに築かれた技術にIoTやAIをうまく組み合わされて対応されているのかもしれません。 そして、工夫されているのはそのような精密給餌についてだけではないでしょう。飼料の詳しい内容は書かれていませんが、記事を読む限りはタンパク源をすべて植物性のもので代替されているようです。マダイの飼料のエネルギー密度はそれほど高くありませんので配合にもある程度の余裕を持たせやすいのですが、出荷に向けて魚を仕上げる大切な期間のタンパク源を植物性原料だけに頼るのですから飼料の配合設計にも従来とは異なる工夫が施されているのだと思います。 Colombo and Turchini (2021) を参考にすると養魚飼料は魚粉ベースのAquafeed 1.0から植物性原料を利用するAquafeed 2.0へバージョンアップし、現在では地域性を重視したサーキュラー・バイオエコノミー(circular bioeconomy)を活用するAquafeed 3.0へと進化しようとしています。日本で最初にその領域にチャレンジして到達するのも赤坂さんのような真面目で好奇心がある規格外な養魚家なのでしょうね。そのような養魚家には優れた協力者も自然と集まります。 * Colombo, Stefanie M. and Turchini, Giovanni M. (2021) ‘Aquafeed 3.0’: creating a more resilient aquaculture industry with a circular bioeconomy framework. Reviews in Aquaculture 13: 1 – 3. https://doi.org/10.1111/raq.12567 愛媛の赤坂水産、菜食マダイで挑む養殖業界「2つの壁」 マダイなどの養殖を手がける赤坂水産(愛媛県西予市)は、育成過程の一部で魚粉を使わない飼料を与えるブランドマダイの販売を始める。養殖業界では海外市場を中心に環境に配慮した食材への関心が高まっているほか、飼料の高騰リスクへの対...

コオロギと魚

 養魚飼料原料としての昆虫の利用性。日本ではポツポツと話を聞く程度で、どのぐらいの熱量で検討されているのか良く分からないのが現状ですが、これまで水産養殖とは直接的なつながりがなかった大学でも研究が活発化してきているようです。 ニジマスやビワマスにコオロギ。子供のころにコオロギを餌にアマゴを釣ったことを憶えています。ナマズもよく釣れましたので肉食性の淡水魚には良い餌生物なのでしょう。しかし、自然界で魚はコオロギだけを食べているわけでなく、魚が毎日食べる(魚に毎日食べさす)養魚用飼料に組み込む場合には他の代替原料の場合と同様に原料間/栄養バランスを上手くとっていくことが重要になります。 また、パワーが発揮するポイントは成長ではなく、免疫や摂餌性/消化率といった機能性である可能性もあります。大学も認識しているように、それぞれの原料が持つパワーは何か?研究を通して見極めることがこのような新規代替原料の発掘/開発には必要で、どのような結果がでてくるのか楽しみです。 魚粉の代替というと数十%の大きな配合率を狙いがちですが、その原料のパワーは数%の配合率で発揮されるかもしれません。数%でも飼料に配合される(できる)環境的/産業的インパクトを過少に考える必要はありません。 そして「魚粉」については、ペルーやヨーロッパに代表される高級魚粉が日本に入ってこない近い将来を研究計画に入れ込むことも望まれます。そのような魚粉の代替を考える重要性は薄れ始めてきており、大豆、コーン、小麦の代替を考えるべき時代へとすでに突入しているのですから。 https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20211005/2000052167.html(リンクが切れていますが残しておきます)

アスタキサンチンの薄れ

飼料には十分なアスタキサンチンが含まれているのに、どうして最近のアトランティックサーモンでは筋肉(フィレ)の赤味が薄くなってきているのでしょうか?ノルウェー海産物研究基金(FHF)からの予算でノルウェー食品・漁業・水産養殖研究所(Nofima)が主導する新たな研究プロジェクトが開始されました。 これまでにもサケ・マス類の筋肉の色素(主にアスタキサンチン)に影響を与える要因については種々の研究がなされており、例えば遺伝的系統、収穫(出荷)サイズ、飼料のω3脂肪酸などの関与が示されていますが、ノルェーのアトランティックサーモンを対象にしたNofimaによる一連の研究からは水温や疾病ストレスの影響と同時に、海産原料の配合量の低減化に伴って低下している飼料のリン脂質含量も大きな要因の一つであることが次のアウトプットとともに分かってきました。 ・飼料のリン脂質含量が食餌性(飼料由来の)アスタキサンチンと脂質の消化率に影響を与え、また飼料のリン脂質が低すぎると魚の成長が緩やかになる。 ・飼料に十分な魚粉が配合されていないと魚の食欲が低下し、腸での脂肪の蓄積が認められる。 ・魚粉の配合量が低い飼料へのリン脂質の添加により、魚の消化率と成長が正常化する。 ・腸への脂肪の蓄積は大豆由来のリン脂質を与えた魚よりも海産由来のリン脂質を与えた魚で少ない。 ・しかし、筋肉(フィレ)の赤味は大豆由来のリン脂質を与えた魚で最も強い。 今回開始されたプロジェクトでは、これらの成果を掘り下げるかたちで魚体内でのアスタキサンチンの動態や各リン脂質の関りが検討されるとともに、飼料のビタミンAの影響や低酸素ストレスとの関連を調べ、また、細胞レベルでのアスタキサンチン取り込み、変換、蓄積のメカニズムについても遺伝編集技術を利用して解析していくようです。 アトランティックサーモンはアスタキサンチンを生合成しないため、商品価値となる筋肉(フィレ)の赤味を生み出す(色揚げ)には飼料(エサ)からアスタキサンチンを摂取させて筋肉(フィレ)に蓄積させる必要がありますが、筋肉(フィレ)へは飼料に含まれるアスタキサンチンの10%しか蓄積しません。これは消化吸収されるアスタキサンチンが飼料のアスタキサンチンの30~50%程度でしかなく、その上、体内で代謝、変換、分解されたり、体外へ排泄されたりして、筋肉への蓄積にまわるアスタ...

これからの配合飼料

「From alternative to complementary: towards a more judicious use of marine resources in aquafeed」との題でオーストラリアDeakin大学のGiovanni M. Turchini教授によるプレゼンテーションです。 演題の「From alternative to complementary」ですが、セッションのなかでも使用されているようにalternativeをreplacement、complementaryをcomplementarityと読み替えられたほうがピンとくるかもしれません。例えばサステイナビリティのためには飼料中の魚粉を大豆などで置き換える(replacement)ことをイメージされると思いますが、実際には削減漁業からくる80%以上の漁獲物は資源管理されている持続性に優れたものであるのに対して、大豆では2%程度しか持続性に関わる認証を受けていませんし、さらに魚粉が限られた資源で、しかし栄養学的に優れた原料であるからこそ、より上手に魚粉を他の原料と組み合わせて(complementarity)使うことの重要性が説かれます。 それでは、そのためにはどのようなアプローチが必要なのでしょうか?従来からの飼料(配合)の枠組みのなかに魚粉(魚油でも)と組み合わせる原料を入れ込み、望む性能がでる組み合わせパターンを探るのか?あるいは、対象の原料を軸として、そこに魚粉をはじめとする他の原料を組み合わせることによって、従来からある飼料(配合)の枠組みにとらわれずに新規の飼料(配合)の開発を目指すのか?前者のような従来型のアプローチでは対象原料を組み込むことができる柔軟性が初めから限定されるために原料のポテンシャルを過小評価してしまい、そこからは何も新しいことが生まれない一方で、後者では対象の原料のみならず他の原料についてもその栄養、物理、化学、生化学的特徴などをよく理解していないと進めることが難しいものの、可能性が大きく広がります(動画の39:35ぐらいからパズルの組み合わせを利用して大変わかりやすく説明されています)。例として挙げられている必須・非必須栄養素の捉え方の転換も新たなアプローチの推進に欠かせないものです。 セッションでも紹介されているように2018年にオンライン...

魚やエビは魚粉を必要としているのではなく

「The Current and Future Outlook of Aquaculture and Aquaculture Nutrition」との題でAlbert Tacon博士のプレゼンテーションです。Webinar後半のデスカッションやQ & Aを含めると1時間半の長さになりますが、プレゼンテーションでは最新のFAO統計に基づいた水産養殖産業の現状やそこから見える将来像を、また人それぞれの見方や考え方があると前置きしつつも水産養殖産業が向き合うべき課題、例えば魚粉・魚油代替原料の開発、R&D施設の重要性、原料のポテンシャルを引き出すための工夫など、を養殖魚類栄養学の研究者の立場から述べています。水産養殖のヒト(人間)への食の供給と健康維持のための役割と重要性についても自らの大学とFAOでのキャリア・経験を踏まえて語っており、分かりやすく、ためになる「講義」に久しぶりに出たなという感覚になりました。Tacon博士といえば「魚やエビは魚粉を必要としているのではなく、、、、」の言葉でも有名な研究者ですが、このように手軽に好きな時間にインターネットを通して講義を聴ける大変便利な時代になりました。後半では各代替タンパク源の特徴と課題、バイオフロック技術とRAS技術との比較、またGMOの捉え方についてゴールデンライス(golden rice)や消費者への利益を絡めたデスカッションもあり、水産養殖を志す若い人達が経験と実績を持つ老練研究者の考え方を聞く良い機会のWebinarであるとも思います。  The Current and Future Outlook of Aquaculture and Aquaculture Nutrition 1 Albert Tacon gives a presentation on the current and the future outlook of Aquaculture and Aquaculture Nutrition

世界海洋デーとEPA、DHA

今日は世界海洋デーということですので、雑誌Nature Foodの報告をご紹介いたします。 オメガ3脂肪酸のEPAとDHAは人の健康や脳の発達に欠かせない栄養素であり、世界におけるヒト(人間)への年間必要量は140万トン、一人当たりの日間必要量は500mgとされていますが、現状では年間42万トン、一人あたりでは日間150mgしか供給できていないようです。つまり、年間必要量では100万トン、一人当たりの日間必要量では350mgのEPA+DHAの供給が不足している深刻なギャップが存在していることになります。 このギャップはどのようにして埋めていくことができるのでしょうか? 水産養殖はEPA+DHAを消費する産業として考えられてきましたが、この報告によって水産養殖はEPA+DHA供給の貢献者であることが説明されました。発生を抑制することが可能である食料廃棄物(avoidable food waste)や必ず発生する食料廃棄物(unavoidable food waste)の削減、またそれらバイプロダクト(by-product)の魚粉・魚油製造への利用など挑戦的な課題を解決していくことがEPA+DHA供給者としての水産養殖の地位をさらに高めるためには大切とのこと。EPAやDHAを含有する代替タンパク質や代替油脂の活用を探るだけではなく、足元を見つめ直していく必要もありそうです。 報告は海洋で生み出されるEPA+DHAが漁獲物を経てヒトいたるまでの経路を整理して、バランス(収支)とともに定量化しグラフ化しています。また、各産業における魚粉、魚油の消費量や水産養殖および漁業由来のバイプロダクトの地域別発生量のグラフなどとても見やすく作られていますので、興味のある方は是非ご覧ください Systems approach to quantify the global omega-3 fatty acid cycle - Nature Food Omega-3 fatty acids are important for the human diet and for some aqua and animal feeds. This study reports a supply gap, and using quantitative systems analysis identifies...

トレンド:シングルセルプロテイン

昨年12月の投稿でシングルセルプロテインのUnibioが三菱商事さんからの資金調達で事業拡大を目指すことを紹介しました。それから目立った動きがないなと(勝手に)思っていましたが、先週末にヨーロッパとのビデオ会議(の中休み)でUnibioについて聞いたところ、(あなたの古巣の)Skrettingがティラピアでトライアルを開始するらしいよ、とのことでした。ので、インターネットで検索した添付の記事によると、ティラピアとは書かれていませんが、確かにそのような動きはあるようです。 三菱商事さんが資金を注入するということは実現・実用性が高い飼料タンパク源なのだろうと思っていましたが、Skrettingも関わってくるとなると想像が確信に変わるといったところでしょうか。有望なシングルセルプロテインなのでしょう。Skrettingだけにもちろんサーモンやエビでも検討されると思います。 今回のコロナウィルス禍ではさすがにいったん急落した世界の水産養殖市場ですが、回復も着実に進んでいるようです。水産飼料のグローバル生産量は約4,000万トン、そのうち約10%(400万トン)がサーモン類、約18%約(700万トン)がエビ、約13%(500万トン)がティラピアで;つまりこれら3カテゴリーの水産養殖飼料が世界の水産養殖飼料の約40%(1600万トン)を占めています。ここに1%でも配合されれば16万トン、2%配合されれば32万トン、5%であれば80万トンのボリュームが見込めるわけで、3社ともに将来的な水産養殖拡大のポテンシャルも併せて考え、ビジネスの持続的成長、持続的代替タンパク源の確保、環境持続性への配慮といったターゲットを十分に達成できる計画を策定しているのでしょう。 どのようなトライアルの結果が出てくるのか楽しみです。 Skretting testing Unibio’s novel SCP, with purchase contract potential prize Danish single cell protein innovator, Unibio, has announced collaborative engagement with leading fish feed producer, Skretting.

ティラピアに海藻@北海道

北海道大学でナイジェリアからの学生さんがティラピアの研究をされているということです。ティラピアはコイやナマズとならび養殖対象種として最重要に位置づけられている魚で、近年アフリカ、アジアでは爆発的に生産量が増えています。大学院の学生さんだと思いますが、飼料への海藻の利用について研究をされているとのこと。ティラピアの飼料にはあまり魚粉が必要ではないと思われがちですが、実用飼料は実験用飼料のようにはいかず、結構な割合で魚粉が配合されている事実があります。ティラピアの生産を安定して増やしていくためにも、そのような代替タンパク源についての研究は大変大切なものになると思います。また一方で、これらグローバルな養殖対象魚の生産が増えれば、それらの飼料で代替原料による魚粉・魚油削減が進んだとしても、世界的に魚粉・魚油が不足するのは確実です。ブリ、マダイなど日本の養殖産業もすでにその潮流に飲み込まれていることを認識する必要があります。 https://www.nhk.or.jp/sapporo-news/20200323/7000019371.html (リンク切れのようですが残しておきます)

飼料原料から環境保護 その2

( チキンミール、チキンオイル、フェザーミールの続き です) 一方で、チキンミール、チキンオイル、フェザーミールのカーボンフットプリントも、製造のためのプロセスヒート(熱)を作り出すための燃料の種類によって、より少なくもなるし(木質チップのみのケース)、より多くもなる(燃料油のみのケース)ことが本論文の感度分析(シミュレーション)で示されています。この研究はポルトガルのレンダリング会社(Soja de Portugal SA)をモデルとして扱ったものですので、国や会社によってはこれと少し異なる結果になることも考えられますが、製造工程に大きな違いはないでしょうからプロセス熱による環境負荷を低減するためには再生エネルギーを利用する(部分的にでも)ことが共通の解になるでしょう。 ちなみに論文によると、1 tのニワトリから0.69 tの鶏肉(ヒト用)がとれ、0.22 tの頭、傷肉、内臓と0.09 tの羽が同時にでてきます。単価はそれぞれ2,000 EUR/t、40 EUR/t、40 EUR/tですので経済価値の99%はヒト用の鶏肉にあることになりますが、せっかく命をいただいているのですから、頭、傷肉、内臓から製造「できる」チキンミールと、羽から製造「できる」フェザーミールを代替原料として利用することは動物倫理や動物福祉をも尊重することにもつながり、今後の水産養殖において良く考えるべき点であると思います。 農林水産省の食鳥流通統計調査から、日本の鶏肉の生産量は200万t 。先の重量比を利用すると63万tの頭、傷肉、内臓と26万tの羽がでてきていると見積もられます。これらの全てを代替原料の製造にまわすと仮定すると、論文からチキンミール、チキンオイルおよびフェザーミールの収率はそれぞれ17%、11%および27%ですので、10万tのチキンミール、7万tのチキンオイル、7万 tのフェザーミールが製造できることになります。日本だけでもこのポテンシャルです。 最近はシングルセルプロテイン、昆虫ミール、藻類オイルなどが代替原料としてが注目される傾向にありますが、サステイナブルな水産養殖を語るのであれば、当然、昔から美味しく命をいただき、常に身近にある原料に対しても業界全体で評価して受け入れる時代に入ってきたのではないでしょうか? Life-cycle assessment of a...

飼料原料から環境保護 その1

今回は昨年末からオンラインで発表されているチキンミール、チキンオイル、フェザーミールのライフサイクルアセスメントに関する論文です。 SDGsを念頭にサステイナブルな水産養殖を目指すということは、おのずと地球環境に対するインパクトを低減する方向でオペレーションするということになります。例えばCO2はインパクトを評価するための良く知られた指標ですが、水産養殖における魚の生産の内訳を漁具、漁船、燃料、飼料として、それらから排出される(された)CO2の合計を100%とすると、その大部分の約80%が飼料由来であると報告されています。 したがって、飼料の面からインパクトを低減する努力は重要であり、その効果も大きなものになりうることを認識しなければなりません。それでは、どうすればいいのでしょうか?方法は単一ではありませんが、その一つは飼料に使用されている原料についての理解を深めることです。 ブリ類、タイ類、サケ・マス類の飼料のように、我々に馴染みのある養魚飼料では蛋白源としての魚粉と脂質源としての魚油の配合割合が比較的高く、その由来も以前に紹介したreduction fisheryからのものが多くあります。Reduction fishery由来だからといって全くの「悪」ではありません。資源学的にかなりの厳格さをもって管理されているのと同時に、関わる人々の産業と生活を支えているものも多いからです。しかし、CO2排出に代表される地球温暖化効果や酸性ガス類による酸性化ポテンシャルなどを指標にライフサイクルアセスメントの手法で検討すると、このような由来の魚粉や魚油の地球環境に対するインパクトは漁場往復のための燃料消費などが原因で大きくなります。 一方、この論文で取り上げられているチキンミール、チキンオイル、フェザーミールをみると、そられの地球温暖化効果と酸性化ポテンシャルは魚粉や魚油の概ね50%前後であることが示されています。これはチキンミール、チキンオイル、フェザーミールが鶏肉(ヒトの食用)の生産過程で生じるby-productであること(原料を捕獲しに行っているわけではない)や、それらの原料の鶏肉に対する経済的な相対価値が極めて低いことなどによるためです(鶏肉:2,000 EUR/t;チキンミール・フェザーミール原料:40 EUR/t)。 したがって、これらのことから、魚粉や魚油の使...

シングルセルプロテイン

養魚飼料の原料としてinsect mealとならび世界的に注目されているのが発酵プロセスを経て製造されるsingle cell protein、多くの企業や研究機関が開発競争の真っ只中にあります。これはデンマークのUnibio Internationalが三菱商事さんから投資を受けパートナーシップを結んだことを発表したプレスリーリースですが、今後もこのような企業間協力や投資が活発に続いて急速に拡大していく飼料原料分野になることは間違いないでしょう。例えばアメリカではCargillがこの分野は高い関をもち投資を行っています。魚粉の代替タンパクとしての持続性だけではなく、温暖化ガス削減に寄与できることも、これからの養魚飼料原料して要求される点をカバーできていると言えるでしょう。 Press release- Mitsubishi Corporation invests in, and partners with, Unibio Funds to further the global roll-out of Unibio’ protein-from-methane production technology. London & Copenhagen, 4 December 2019 – Unibio International plc has raised additional...