これからの配合飼料
「From alternative to complementary: towards a more judicious use of marine resources in aquafeed」との題でオーストラリアDeakin大学のGiovanni M. Turchini教授によるプレゼンテーションです。
演題の「From alternative to complementary」ですが、セッションのなかでも使用されているようにalternativeをreplacement、complementaryをcomplementarityと読み替えられたほうがピンとくるかもしれません。例えばサステイナビリティのためには飼料中の魚粉を大豆などで置き換える(replacement)ことをイメージされると思いますが、実際には削減漁業からくる80%以上の漁獲物は資源管理されている持続性に優れたものであるのに対して、大豆では2%程度しか持続性に関わる認証を受けていませんし、さらに魚粉が限られた資源で、しかし栄養学的に優れた原料であるからこそ、より上手に魚粉を他の原料と組み合わせて(complementarity)使うことの重要性が説かれます。
それでは、そのためにはどのようなアプローチが必要なのでしょうか?従来からの飼料(配合)の枠組みのなかに魚粉(魚油でも)と組み合わせる原料を入れ込み、望む性能がでる組み合わせパターンを探るのか?あるいは、対象の原料を軸として、そこに魚粉をはじめとする他の原料を組み合わせることによって、従来からある飼料(配合)の枠組みにとらわれずに新規の飼料(配合)の開発を目指すのか?前者のような従来型のアプローチでは対象原料を組み込むことができる柔軟性が初めから限定されるために原料のポテンシャルを過小評価してしまい、そこからは何も新しいことが生まれない一方で、後者では対象の原料のみならず他の原料についてもその栄養、物理、化学、生化学的特徴などをよく理解していないと進めることが難しいものの、可能性が大きく広がります(動画の39:35ぐらいからパズルの組み合わせを利用して大変わかりやすく説明されています)。例として挙げられている必須・非必須栄養素の捉え方の転換も新たなアプローチの推進に欠かせないものです。
セッションでも紹介されているように2018年にオンラインで公開された論文でTurchini教授自身がこのような考え方をすでに紹介していますが、今回のプレゼンテーションで改めて強く述べられるのは、これまでは第1番目のアプローチのみでそこそこ進んできた飼料の進化のスピードが限界を迎えますますスローダウンしてきたこと以上に、このアプローチの硬い殻を破り冒険する人的、科学的、技術的条件がここ最近になって揃いつつあるからなのかな?と私は思っています。大学や企業などの柔らか頭の研究者が分野を横断して協働し、どのような原料であっても最新の配合と製造技術によって常に最適な物性と性能を持つ最終製品がつくられる。また、そこにはAIが介在する。そういった時代の幕開けが近いのでしょう。ただし、Q&Aのセッションで述べられているように、原料(raw materials)は「生き物」です。そのような基本を知らず、あるいは軽視・無視しては、どのようなアプローチによっても生き物の魚を飼うエサをつくることはできません。
なお、このセッションは5月に逝去されたSena De Silva博士の追悼のためのものでもあり、前半は博士の生涯や功績の紹介にあてられています。De Silva博士はTacon博士と学術雑誌「Reviews in Aquaculture」の創刊にも尽力され、現在はTurchini教授がエディターをされています。謹んでDe Silva博士のご冥福をお祈りいたします。
From alternative to complementary: towards a more judicious use of marine resources in aquafeed
Aquaculture Nutritionists Network & Jefo are hosting Professor Giovanni M. Turchini for its third session of “Talking with Titans” webinar series. As usual, ...
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