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どちらも賛成:陸上養殖と海上(海面)養殖

先週はどうしても時間が取れずお伝えできませんでしたが、前回の陸上養殖に関する投稿を読んだ方から、「陸上養殖に反対されていましたか?」というような反応をいただきました。読み返すと確かにそのようにとられても仕方がないと思うところもありますが、私は陸上養殖にポテンシャルを感じており、実際、友人・知人から彼らが進めているサーモンやエビのプロジェクトについてプラクティカルな進捗を聞くたびに「すごいね」と感じている人間です。そこにあるのは盛られた計画ではなく、儲けるためのビジネスモデル、儲けるためのテクノロジー、儲けるための生産規模、儲けるためにあきらめなかった歴史からつくられるものだからです。しかし、一方で、私は海面養殖にも大きなポテンシャルを感じており、陸上養殖のみにそれを見ているのではありません。海面養殖には陸上養殖にはない歴史があり、安定的に儲けを生み出し続けているビジネスモデルとテクノロジーに支えられており、それらは今でも進歩・発展しています。つまり、私は陸上養殖も海上(面)養殖も基本的には賛成なのです。と、言うことです。

タコの不思議と養殖と生命

無脊椎動物の養殖といえば貝類、ウニ、ホヤ、ナマコ、エビなどの養殖を連想されると思いますが、実はタコやイカについても技術開発が進められています。特にタコの養殖については活発で、生活史(ライフサイクル)を人為飼育条件下で一巡させる完全養殖の基本技術はすでに確立されており、いまのところは海外の企業が事業化へ一歩リードして市場への出荷も近く開始するという情報が流れています。 日本人も大好きなタコですが、世界的なシーフードブームで海外でも需要が伸びることが確かな反面、この瞬間でさえも各国が天然のタコ資源の獲得にしのぎを削っているのが現状で、それに並行するかのように養殖事業化に向けての競争も激しさを増してきています。 このような流れのなかで、知性も高く、痛みも感じるタコを水槽や生簀に閉じ込めて最終的に殺す(〆る)プロセスとして養殖を捉え、事業化に反対する声も高まっていると聞きますが、タコに限らず全ての生きとし生けるもののは尊重されるべきものであり、それを忘れず彼らの生命をいただくことの大切さを説くことも忘れてはいけません。命あるものを食べられないほどに作って、それが食べられずに捨てられるようなことを減らしていく取り組みもさらに拡大していくべきでしょう。 イカとタコの墨(すみ)吐きなど彼らの不思議で素晴らしい能力を子供向けにやさしく解説した今回の日経の記事ですが、頭が固まりつつある中年の私もふむふむと読み、そこで浮かんだことを書かせていただきました。 イカやタコはなぜ墨を吐くの? 敵から身を守るためだよ この前レストランに行って初めてイカ墨スパゲティを食べたよ。口の中が真っ黒になっちゃった。習字の授業で使う墨は食べられないから、それとは少し違うみたい。どうしてイカやタコは黒い墨を吐くのかな。タコやイカの仲間は頭足類。絶滅してしまったけれど、恐竜と同じ中生代に生きていたアンモナイトも同じ頭足類だ。二枚貝やウミウシなどと同じ軟体動物なんだよ。でも他の軟体動物とは大きく違い、泳いだり、体の色を変えたり

論文紹介:養殖の多様性と持続性の大切さ

海での養殖では世界を養えない/Farming fish in the sea will not nourish the world というインパクトがある題で一つの論文がnature communicationsに掲載されました。海面養殖、つまり海での海産魚の養殖は高付加価値魚種を対象としたものであり、実績、生産効率、雇用規模、環境負荷、魚価など多くの点において淡水魚養殖には及ばないということですが、これらのことは従来から言われていることですので、海産魚養殖の華やかさに隠れて目立たない淡水養殖の実力と将来性の改めての指摘を意図したものと捉えたほうが良いのかもしれません。日本にいると淡水魚養殖のすごさを実感する機会になかなか恵まれないのが実状です。情報もコンパクトに濃縮されている今回の論文。水産養殖への参入/出資を検討している企業や投資家の方だけではなく、水産養殖を勉強している学生さんや若い研究者に対しても大変インフォマティブなものであると思います。 ただし、だからといって淡水養殖が圧倒的に優れるのではないとの考えも、私は持っています。先日の投稿でも書きましたが、どれが良いということではなくて、どれもが互いのバランスをとりつつ発展していくことが重要であるとの考えに変わりはありません。また、ほとんど語られないのが不思議ですが、農作物や畜産物と同じように、水産養殖物にも食(魚)の多様性の提供を通して人の心を幸せにする役目/役割があります。イワシも美味しいけれど、今日はブリが食べたいな。サーモンもいいけど、今晩はお酢をかけたティアピアの素揚げにしよう。魚だけでなく、エビも美味しいよね。こういうことは、それぞれの養殖形態があってのこと。持続性を保ちつつ大切に発展させていきたいものです。 https://www.nature.com/articles/s41467-020-19679-9

バランスの大切さ

この記事にも紹介されているように最近では陸上養殖(RAS)と細胞培養による魚介類肉の生産について大きく報道されることが多くなってきました。以前から私のところにも投資会社や出資を検討している企業から現状と将来性についてのオピニオンを求める問い合わせがありますが、コロナ・パンデミックの影響もあってか、ここにきて注目度が急激に上昇してきているなと感じています。しかし、ここで心にとめておきたいのは、RASだけでも、細胞培養だけでも、またその併用だけでも、食料としての魚介類の生産を質的・量的に賄うのは難しいだろうということです。既存の海・湖・池面養殖も並行して進化させ、それらを両輪として動かしていくことでなければ、人間(ヒト)を養い満足させていくことは困難でしょう。陸と水界の両方をフルに活用していかなければならないと思います。現状ではRASと細胞培養のいずれにおいても商売として独り立ちしているケースはほとんどありません。それなのに多くの関心がそこに集まるのは「環境にやさしい」や「動物を殺さない」など投資家や出資者、そして一般の消費者にとって理解しやすくインパクトがあるキーワードが存在するためです。華やかですしね。その一方で常に比較対照される海・湖・池面養殖は実績があるにも関わらずネガティブに捉えられがち。関心・評価のインバランスを心配しています。RASが良い、細胞培養が良い、海・湖・池面養殖が良いということではなく、バランスを保つためには?できることから始めている今日この頃です。   サーモンは陸上養殖…食物はどこでもつくれる 人口は2050年に90億人に達すると予測されている。そのとき、私たちは人間らしい食を満喫することができるのだろうか。大地や海の恵みは有限だ。食料を適切に行き渡らせることができないなら、持続可能な農業や牧畜、水産の取り組みを前に進めるしかない。場所を選ばず食物をつくり、地産地消に持ち込めるかが人類を救う。