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エルニーニョ再来?

ラニーニャ/エルニーニョ現象という言葉が知られるようになって久しいですが、これらが養殖を含む漁業にも大きなインパクトをもたらすとは(若い頃は)思ってもいませんでした。 海洋研究機構JAMSTECの情報webページで今年の予想について説明されており、現在は南米沖赤道付近の海水温が低いラニーニャ状態に傾いているのが、これから徐々に同海域の水温が高くなるエルニーニョ状態へと遷移していくようです。 しかも今回予想されているエルニーニョは、2023年に観測されたものと類似したものになり、長期化して翌年まで続きそうとのこと。俗にいうスーパーエルニーニョとなって海水温と気温に大きな変化をもたらし、前回の時のように長期にわたって魚の成長や生残に多くの影響を与えることが危惧されます。 長く続いていた黒潮の大蛇行が解消されている状況と、今回予測されているエルニーニョが、温暖化に加えてどのような相互作用をもたらすかについても注視し、早期の対策・対応を目指す必要が出てきているものと思われます。 今夏、エルニーニョ現象による異常気象が発生か? 2024年12月から発生したラニーニャ現象(2025年1月21日既報)は、2025年春には一旦衰退したものの、夏の終わり頃から再発達し、現在も太平洋熱帯域はラニーニャのような状態が維持されています。アプリケーションラボの最新の予測(2026年1月1日時点)では、この状態が、晩冬まで続くと予測しています。その後、早春には、熱帯太平洋は平年並みの状態に戻り、夏にはエルニーニョ現象へと遷移していくと予測しています。

垂直方向の高水温対策:waterborne feeding

前回はマルハニチロさんの水平方向での温暖化対策の紹介でしたが、今回はニッスイさんによる垂直方向の対策が取り上げられています。 タイプによって沈下式、沈降式、浮沈式などと呼ばれる垂直方向への対策は、基本的に生簀が常に水中にある点が特徴です。漁場の水深や潮の流れにもよりますが、例えば表層の水温が30℃でも、その10 m深では2、3℃低い27~28℃台の夏場のブリには理想的な水温をとることができます。30℃を超えてくると高温障害の恐れが強まりますし、この水温に近くても摂餌はしますが、成長に対する無駄が発生したり、健全さが失われ始めたりするようになります。このような高水温の影響を軽減できことは大きな利点ですが、全ての生簀のタイプに共通した欠点として、給餌をする際に水中の生簀から水面に伸びている網の口(くち)を開けて餌飼料を投入するか、水中の生簀を水面浮上させるなどの手間がかかるということがあります。 今回の記事で紹介されているのは、これらの手間をかけずに、水中に沈めたままの生簀内で給餌を行う技術です。Waterborne feedingと呼ばれる給餌方法で、飼料は給餌船から水でホースを通り生簀に運ばれ水中で魚に与えられます。もともとこの技術は、従来の空気(エアー)で飼料を運ぶ方法(airborne feeding)よりもエネルギー損失(電気、温暖化ガスなど)や飼料の物理的損傷(割れ、かけ、粉化)を効率よく抑えることができることと、専ら、アトランティック・サーモンにおいては表層で感染が成立する寄生虫(シーライス)の対策として開発されてきたものです。陸上養殖においても省エネや騒音対策の観点からシステムの洗練化が進められています。 実証試験によって、この給餌技術が温暖化への対応にも生かすことができるか注目です。日本で問題になる寄生虫のなかにはアトランのシーライスと同じような特性をもち感染するものもあり、ブリだけでなく他の魚種への応用も期待できるかもしれません。水を通して飼料を運搬するため、システムの複雑さや飼料からの栄養成分のリーチング(漏れ)などの課題も残っていますが、検討すべき技術の一つであることに間違いないでしょう。 ニッスイ、いけすを常時沈めてブリ養殖 高水温に対策 ...

温暖化:魚の体温

魚は人(ヒト)のような体温を持ちません。魚は水にいますので基本的に体温は水温で、水温が体温です。魚は自分たちに適した水温のなか(範囲)で生活することで、自分たちに適した体温を保ちます。しかし、適した体温を保てない場合、魚はそれを得られる水温に移動する(泳いでいく)ことで対応します。 養殖されている魚ではどうでしょうか? 限られた空間の生簀で魚を養殖するということは、魚の自然な行動を制限しているということであり、魚は人の管理に頼るしか自身に適した体温(水温)を得ることができません。言い換えれば、そのために工夫して自分の魚に適した水温を与えることが養殖という事業の義務ともいえ、それを果たそうと努めるのが養魚家(企業も含め)です。 水温に対する工夫には、この記事のように生簀や漁場の水平方向(例えば、高水温なら高緯度、低水温なら低緯度)への移動が検討されるほか、表層の水温が高くなりやすく低くもなりやすいことから垂直方向(生簀の沈下や深底化)への移動もオプションです。 また、どの方向への移動でも、低酸素や赤潮のリスクを考慮に入れて場所や水深を決める必要があります。魚に対する水温の影響はこれらのイベントが重なることでより深刻化するのが一般的で、例えば、水温30度でも酸素飽和度80%では問題なく魚は元気なのに、酸素飽和度が70%に低下すると斃死やショックが出はじめるというようなことが起こります。 配合の調整や機能性原料の添加といった飼料からのアプローチは、このような生簀や漁場の物理・水質環境についての工夫があって初めて効果を期待することができるものであり、「魔法の弾」ではありません。 選抜育種やゲノム編集等で温度耐性を付加することができても、海面での養殖では逃亡による生態系への影響リスクを避けなければならず、そのためには性成熟しない魚の生産やその魚を再生産する技術の確立が必要であり、それにはまだ時間を要します(詳しくは前回投稿を参照)。 一方で、水平や垂直方向への移動が難しいとしても、給餌量/頻度の調整や低収容密度化によるストレス軽減を通して、温度の影響を少しでも抑制しようとするなどの試みは、古くても新たなものとして検証されるべきでしょう。 温暖化に伴い、養殖を取り巻く水環境が変化していくことは必至であり、そこでは養魚できるところ、すなわち、挑戦・工夫する人たちだけが生き残ります...

Gill Oxygen-Limitation Theory

  Gill Oxygen-Limitation Theory(GOLT:鰓酸素制限理論)についての最新の総説です。専門外の私が理解するには難解な理論ですが、相当ざっくりとした説明が許されるならば、魚の成長スピードや魚がどこに棲む(行く、回遊する)のかは鰓(えら)でどれだけの酸素を摂取(呼吸)できるかに大きく影響されるというものです。地球温暖化による海水温の上昇のインパクトを説明する際には必ずといっていいほど言及される理論ですがGoogleでざっと調べても日本の専門家による解説(日本語)は見当たらず、これが国内ではあまり知られていない理由の一つかもしれません。この総説にあるように一般化(統一理論化)するにはまだ議論すべき点も残されているようですが、2013年の発表当初から受けてきた種々の批判のせい(?)もあってかなり洗練されてきているようです。ミクロなことでこの理論を適用することができるのかはわかりませんが、最近かなりの数のブリが北海道で漁獲されるという現象は、ブリが酸素を求めて(かつ、餌も豊富な)海水温が比較的低い海域(酸素が豊富)に回遊域をシフトさせているということを物語っているのかもしれません。また、養殖業では近年の高水温で酸素が相対的に少ない時期が長引き、それが魚の成長や生産性に悪影響を及ぼさないのかも心配です。魚の餌料転換効率や成熟のタイミングにも関わるGOLT。日本の水産業にとって身近で大切な魚を考えるときにも知っておきたい理論ですね。 The gill-oxygen limitation theory (GOLT) and its critics The gill-oxygen limitation theory (GOLT) explains many previously unexplained aspects of the life history of fish.