飼料原料から環境保護 その1
今回は昨年末からオンラインで発表されているチキンミール、チキンオイル、フェザーミールのライフサイクルアセスメントに関する論文です。
SDGsを念頭にサステイナブルな水産養殖を目指すということは、おのずと地球環境に対するインパクトを低減する方向でオペレーションするということになります。例えばCO2はインパクトを評価するための良く知られた指標ですが、水産養殖における魚の生産の内訳を漁具、漁船、燃料、飼料として、それらから排出される(された)CO2の合計を100%とすると、その大部分の約80%が飼料由来であると報告されています。
したがって、飼料の面からインパクトを低減する努力は重要であり、その効果も大きなものになりうることを認識しなければなりません。それでは、どうすればいいのでしょうか?方法は単一ではありませんが、その一つは飼料に使用されている原料についての理解を深めることです。
ブリ類、タイ類、サケ・マス類の飼料のように、我々に馴染みのある養魚飼料では蛋白源としての魚粉と脂質源としての魚油の配合割合が比較的高く、その由来も以前に紹介したreduction fisheryからのものが多くあります。Reduction fishery由来だからといって全くの「悪」ではありません。資源学的にかなりの厳格さをもって管理されているのと同時に、関わる人々の産業と生活を支えているものも多いからです。しかし、CO2排出に代表される地球温暖化効果や酸性ガス類による酸性化ポテンシャルなどを指標にライフサイクルアセスメントの手法で検討すると、このような由来の魚粉や魚油の地球環境に対するインパクトは漁場往復のための燃料消費などが原因で大きくなります。
一方、この論文で取り上げられているチキンミール、チキンオイル、フェザーミールをみると、そられの地球温暖化効果と酸性化ポテンシャルは魚粉や魚油の概ね50%前後であることが示されています。これはチキンミール、チキンオイル、フェザーミールが鶏肉(ヒトの食用)の生産過程で生じるby-productであること(原料を捕獲しに行っているわけではない)や、それらの原料の鶏肉に対する経済的な相対価値が極めて低いことなどによるためです(鶏肉:2,000 EUR/t;チキンミール・フェザーミール原料:40 EUR/t)。
したがって、これらのことから、魚粉や魚油の使用割合を低減し、逆にその代替となる原料のチキンミール、チキンオイル、フェザーミールの使用割合を高めた飼料を積極的に活用するのが、水産養殖の地球環境に対するインパクトの抑制につながることが分かります。
地球環境に対するインパクトといっても、ピンと来られないかもしれません。生簀周辺の水といったミクロな環境でなく、マクロな概念を扱うために漠然と捉えられる傾向にあるからです。
しかし、例えばCO2排出やカーボンフットプリントの抑制と管理は、こらからの水産養殖で避けて通れないものになってきています。生産した魚を消費地へ送ってビジネスを行おうとする場合、その魚には生産過程でかかるカーボンフットプリントだけではなく、車や航空機の輸送に伴うカーボンフットプリントなどが積もってきます。
そのような輸送手段にかかわるカーボンフットプリントを直接コントロールすることは難しいですから、自ずと生産過程でのカーボンフットプリントの削減を目指すことになり、その一つの手段がカーボンフットプリントが少ない代替原料を配合した飼料をうまく使った魚の生産ということになります。
すこし長くなってきましたので、続きはまたの機会に。。。。
*論文ではポートリー(バイプロダクト)ミール、ポートリーオイルですが、ここでは日本で通りが良いチキンミール、チキンオイルしました。
Life-cycle assessment of animal feed ingredients: Poultry fat, poultry by-product meal and hydrolyzed feather meal
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