マダイ養殖のライフサイクルアセスメント(LCA)分析
AI搭載給餌機を活用したマダイ養殖では従来のものを使用するケースと比較して温室効果ガスを約2割程度削減できる:ウミトロンさんによるライフサイクルアセスメント(LCA)分析結果です。
2年の養殖期間のうちの後半1年でAI搭載給餌機を活用した実証試験結果がベースであり、報告書でも述べられているように海況や気候など他の多くのファクター―による影響を受けるところでもありますので一般化するにはもうすこし時間が必要かと思われますが、今後はこのようなかたちで、単に機材(今回の場合は給餌機)の性能評価いうことだけではなく、自社の事業がどの程度のインパクトで環境に影響を及ぼしているのかを客観的に評価してその結果を公表していくことが日本の養殖産業にも求められ、特に国際認証を受ける場合には必須になることでしょう。
また、マダイ刺身100 g当たりの温室効果ガス排出量の9割近くが飼料に由来することから、温暖化への影響を低減させていくためには飼料の調達、給餌(増肉係数)あるいは単位数量当たりの温室効果ガス排出量を削減していくことが課題であると指摘されていますが、ここで生産から販売・消費のプロセスに事業者間で大きく変わる/変わっていくことがないと仮定すると、この部分(飼料の調達、給餌(増肉係数)あるいは単位数量当たりの温室効果ガス排出量)での工夫と努力が温室効果ガス排出量に関して他業者との差別化を生み出す「ツボ」になることが分かります。
今回使用された飼料についてみると魚粉だけでなく、フェザーミールとチキンミールを併用したものようです。一般的にこのような飼料原料の使用は魚粉よりも温室効果ガス排出量の低減につながることが知られていますが(飼料原料から環境保護 その1とその2)、参考資料からそれぞれの配合率はそれほど高くないことがうかがえます。魚粉と他の原料の併用をもっと積極的に検討していくのも給餌(増肉係数)などへの対応に加えてプラスの戦略になると思われます。
ちなみに、アトランティックサーモンでは可食部100gの温室効果ガス排出量が0.79 kg CO2 eqという数字があります。評価方法によって変動するところですので直接的な比較は難しいかもしれませんが、牛(部分肉)を比較対象とするよりは養殖魚vs養殖魚として示すべき情報なのかもしれませんね。
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