飼料効率と増肉係数

飼料効率と増肉係数について聞かれることが度々あります。馴染みがなければよく分からない指標ですので疑問に思われるのも当然だと思います。興味ある方々への参考になればと思い、ここに簡単に説明します。平易にしておりますので専門的には少しズレているところがありますが、そこはご容赦ください。

飼料効率(%)=100×魚体増重量/摂餌(or 給餌)量

増肉係数(無次元数で単位無し)=摂餌(or 給餌)量/魚体増重量

で算出され、いずれも飼育(養殖)成績を評価するための指標して利用されます(ただし、魚体増重量は湿物重量;摂餌(or 給餌)量は乾物重量を使用して計算)。

それぞれが逆数の関係で、飼料効率はエサ(飼料)の何%が魚の体になったのかを示すのに対し、増肉係数は魚が1kg体をつくるために必要としたエサ(飼料)の量を示しています。個人差はありますが、飼料効率からはエサ(飼料)のパワーを感じ、増肉係数からは魚に使ったお金(飼料=コスト)を感じる人が多いのではないでしょうか。

どちらの指標を使うのかは目的によるものの、一般的には研究分野で飼料効率が使われ、養殖プラクティスには増肉係数が好まれる傾向にあります。もちろん、両方のパラメーターを使ってもかまいません。ただし、飼料効率は「上がる」と成績の向上を意味しますが、増肉係数の「上がる」は成績の悪化を示しますので、これらの指標を利用する際の言葉の選択には気を付ける必要があります。増肉係数で好成績を伝えるには、増肉係数が「下がる/落ちる」ことが必要で、「対照区よりも低かった」などのように説明しなければなりません。

また、どちらの指標も他のファクターの影響を受けることを知っておく必要があります。例えば、魚の成長(大きさ)はその代表的なもので、飼料効率は魚の成長に伴って低下し、逆に増肉係数は増加します。したがって、成長した魚で増肉係数が2.0近くかそれ以上ということはよくあることですが(サーモン・トラウトを除く)、稚魚でそのような数字がでることはまれです。稚魚では増肉係数は1.0近くかそれ以下、飼料効率で表すと100%近くかそれ以上になるのが普通です。通常の養成や試験研究において稚魚での増肉係数が2.0付近(飼料効率で50%付近)の成績が出ている場合には、魚の状態やエサ(飼料)に疑いがあり、そこから得られたデータには正確性や信頼性がないと判断できます。このようなデーターでもトップジャーナルに掲載されている論文を見かけますが、専門外や経験が浅いレフリー(査読者)を通過しただけのことであって、そのような論文が水産養殖産業や科学分野の専門家に対して通用することはありません。どちらの指標も簡単に算出でき大変便利なものですが、その特性を理解しておくことがとても大切です。

ちなにみ、英語で飼料効率はfeed efficiency(FE)あるいはfeed conversion efficiency(FCE)、増肉係数はfeed conversion ratio(FCR)とされるのが一般的です。また、飼料効率は計算時に100を掛けず、%で表さないこともあります。

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