陸上飼育施設と魚運搬船のバイオ・セーフティー@ノルウェー
陸上養殖システム(RAS)のバイオ・セーフティに関するオープンアクセスの総説で、ノルウェーでのアトランティック・サーモンのスモルト生産施設と、生産された魚を海面生簀へ運ぶ運搬船(ウェル・ボート)をモデルとしています。
バイオ・セーフティとよく似た言葉に、バイオ・セキュリティがありますが、この総説では「病原体の拡散を防ぐための生産全工程に対するコントロール」を意味するバイオ・セーフティの観点からレビューを行っています。
著者らもイントロで述べているように、バイオ・セーフティについて完全に把握し理解している人はいないと思います。恐らく、これはアトランに限ったことではなく、他の全ての養殖対象生物(魚介類や藻類)に対しても同様でしょう。情報や知見が多くの分野にわたる断片的なもので構成されており、これらを取りまとめて俯瞰的に理解する「機会」がなかなかなたったことが理由の一つだと思いますが、今回のレビューはそれを与えてくれます。
アトランのスモルト生産施設とウェル・ボートに対する総説ではあるものの、それらを他の養殖対象生物や、生産施設、日本でいう活魚運搬船や活魚トラックなどと読み替えても面白く読めると思います。ノルウェーにおける魚の生産施設や運搬に対する規制にも触れられており、日本との比較や今後の在り方を考える上でも示唆に富みます。
なお、今回の総説では要因をかなり細かく因数分解していますが、ノルウェーだけでなく他のRAS開発国でも、初めからすべてに対応することは不可能で、むしろ、そうした不完全さが改善・改良のヒントとなり、レベルを高めてきた歴史があります。不完全な技術と施設でなんとか生産していこうとするなかで、時間とお金をかけるべきところを見つけ出し、適切に対応してきた過程とも言えるでしょう。
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