酸素飽和度
酸素飽和度の計算ツール
結果:
(2023.12.04作成)
解説
水中の溶存酸素量は魚の成長や健康に大きな影響を与える重要なファクターの一つです。
一般的には「濃度」(単位:mg/Lあるいはml/L)として測定・記録されることが多いのですが、養殖の分野では飽和度(単位:%)にも注意が払われています。
水に溶け込むことができる酸素の量は主にその時の水温と塩分に左右され、水温が高いほど、また、塩分が高いほど酸素は水に溶け込みにくくなり、逆に、水温、塩分が低いほど酸素が水に溶け込める量は多くなります。
しかし、例えば、水温28℃、塩分35で濃度が5.2 mg/Lの時と、水温16℃、塩分33で濃度が5.2 mg/Lの時で、魚をとりまくの水中の酸素の状況は同じなのでしょうか?溶存酸素濃度はどちらも5.2 mg/Lです。
飽和度は水に溶け込むことができる酸素の最大量に対して、今その水にどの程度の酸素が存在しているのかを「割合」で示してくれます。水温や塩分を考慮に入れて正規化されているため、平たくは、水温や塩分にかかわらず、今その水の酸素の存在量が魚にとってどれだけの余裕(アベイラビリティ)があるものなのか?といった、養殖には必要不可欠な情報を直感的に理解できる形で知らせてくれる便利な指標ともいえます。
私たちが対象としている魚は普段は少なくとも飽和度80%以上の海水を泳いでいる動物です。陸上の水槽では純酸素などを利用して飽和度90%以上を常時確保しますが、生簀などフィールドの施設ではそういうわけにもいきません。
明確な基準ではありませんが、何らかの理由(プランクトンの増殖や水層の混合など)で溶存酸素が低下して飽和度が60%程度に近付くと、魚の酸素消費量の増加をもたらす作業(オペレーション)にはそれまで以上の注意が必要になってきます。60%を切って50%に近づく恐れがあるのなら、作業の中止を検討すべきです。
先ほどの例では、溶存酸素濃度が同じでも、前者で80.7%、後者では64.4%と、飽和度に約16%の違いがあります。実際には特に水温が低くなると摂餌や代謝も抑えられるため、高水温の時よりも低酸素のインパクトが比較的小さくなりますが、それでも後者では水の中の酸素の量に余裕がないことがわかります。
また、例えば、前者(水温28℃、溶存酸素濃度5.2 mg/L)で急激な潮の流入(急潮)が起こり、水温が2℃、溶存酸素量が1.0 mg/L低下するだけでも、飽和度が80.7%から63.1%へと急激に落ちることがわかります。魚の摂餌や代謝が活発な高水温時期に、このような現象に遭遇することは珍しいことではありません。
このような場合、注意がないまま給餌した後に酸素がさらに下振れすると最悪の場合は死亡につながります。
また、工夫もなく出荷やワクチン接種のために取り網を入れたり網を寄せたりして魚を密(みつ)にすると、暴れる魚がただでさえ不足気味の酸素を急激に消費して局所的な酸素欠乏に陥り死亡することもあります。
疾病や赤潮などで鰓の機能が落ちている場合には、このような事故につながる酸素の閾値はさらに高くなっていることが普通です。
溶存酸素濃度と飽和度の両方を測定できる機器を使用されているのであればいいですが、そうでなかったり、過去の溶存酸素濃度の記録から飽和度をチェックしてみたかったりする場合には、このようなツールで飽和度も計算して水の中の酸素の状態を総合的に捉える「くせ」をつけましょう。
水温と比べると塩分の影響は小さいですので、降雨や河川水などによる影響を心配しなくてもいいケースで海水の塩分が不明の場合には、塩分32や33でざっくり計算してもかまいません。
現在では塩分は無次元数ですが、ここでは慣例的に‰(パーミル)の単位を使用しています。psu(単位ではありませんが)で表されていることもありますが、psu=‰(パーミル)と捉えていただいて実用上問題ありません。また、‰=pptとして捉えていただいても差し支えありません。
なお、このツールは海水中の溶存酸素飽和度をフィールドで簡易的に知るためのものであり、気圧などの要因による影響を考慮していません。気圧や電導度(塩分ではなく)から飽和度を求めたい場合には、米国地質調査所の溶存酸素溶解度表(DOTABLES: Dissolved oxygen solubility tables)が便利ですのでご参照ください。
*どちらのツールの使用もご自身の責任でお願いいたします。
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