DHAがアトランテックサーモンのダーク・スポット(dark spots)の発生を抑える?

 アトランテックサーモンをフィレにするとダーク・スポット(dark spots)と呼ばれる“しみ”を認めることがあり、これがあるとフィレの商品価値が大きく損なわれます。ブリのフィレでみられるようなものとは違ってメラニン色素の沈着によるもので、その発生を抑えるためには原因と思われるワクチン接種の副反応やウィルス感染症をコントロールする必要があると考えられてきましたが、Nofima(ノルウェー食品・漁業・水産養殖研究所)は配合飼料に含まれる高度不飽和脂肪酸のDHA含量もdark spotsの生成に大きく関わることを示しました。

成長には2%程度でよいところ、dark spotsのもとになるメラニンの合成を抑制するには3.5%程度のDHAが必要になるということで、飼育成績に基づき極限まで低減されている海産油脂(主に魚油由来)の配合率が見直されるきっかけになるかもしれません。まだ詳しい内容が公開されておらず投与期間などの細かな条件は分かりませんが、例えば魚油を1.5%増加、これをノルウェーで生産されている160万トンの配合飼料全体に適用すると2.4万トンの魚油の追加需要が生まれることになり、原料市場へ与えるインパクトは小さくないでしょう。

しかし、それだけの魚油を配合するということはコストの上昇に直結しますので、どのステークホルダーにおいても費用対効果についての慎重な判断が求められることは必然であり、また、その一方で、併用できるポテンシャルが高いDHA藻類など魚油代替油脂への関心も改めて高まってくるように思えます。吹いた風がどの桶屋にまで届いていくのか?影響する範囲が大きな産業だけに注目されます。

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