カニカマと培養肉
米国のフィンレス・フーズが植物ベースのマグロ風味食品を開発とみなと新聞が伝えています。本来のターゲットである培養肉製造には技術的、コスト的に解決すべき課題がまだ残されているということでしょう。
培養肉の将来性はどうなのでしょうか?2年ほど前からそのことについてしばしばコメントを求められます。問いの多くが「魚(多くはマグロ)の代替になり得るか?」ですが、それに対する私からの答えは「なり得ない」です。培養肉は水の中で泳ぎ育った動物(魚)ではなく、培地で培養された細胞の集団です。動物は細胞からできますが、細胞は動物ではありません。こう言うと必ず「そういうことではなく、食べ物としてはどうですか」という質問が追加されますが、それでも答えは「代替にはなり得ない」です。培養肉はカニカマや今回の記事で紹介されている植物ベースの加工物の先にあるもので、食品や食事のカテゴリーとしては魚や刺身になることはなく、またそのように認知されることもないでしょう。カニカマや大豆パテのバーガーを、本当のカニ(蟹)やビーフ(牛)のバーガーと思って食べている人はいないですよね。
しかし、そう伝えると「それでは培養肉に将来性はないのですか?」という確認の質問をいただきますが、その問いに対する私の答えは一転して「将来性はあります」です。培養肉=魚というのが生産者側も消費者側も先ずは思い描きアピールする(したい)等式ですが、実際のところ培養肉のポテンシャルは培養肉≠魚、つまり培養肉は魚ではなく、培養肉は培養肉としてビジネスモデル化できるところにあるのだと思います。例えば、今のカニカマの世界的成功はカニ(蟹)肉の模倣から始まったカニカマを早期にカニカマ≠カニ(蟹)と自ら認識して商売の舵を大胆に切った(切れた)ことに基づいています。培養肉を全く新しい時代の食べ物、これまでになかった食べ物と思うところ(宣伝されているところ)に落とし穴があり、そこに入ってしまうと商品としてのポテンシャルを捉えきれなくなります。食べ物は食べ物。「先輩食品の歴史が培養肉にとってもいいお手本になるのではないでしょうか?」という答えでいつもインタビューのコメントを締めくくっています。
米企業が植物からマグロ風味人工肉の開発に成功(みなと新聞) - Yahoo!ニュース
マグロ人工肉の開発を手掛ける米国のスタートアップ企業、フィンレス・フーズ(本社・カリフォルニア州)が植物由来のマグロ風味食品の開発に成功した。来年にもレストランやフードサービス分野への販売を目指す
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