養魚飼料原料としての大豆

 前回の『魚粉の代替原料として使用されてきた植物原料、特にsustainabilityとtraceabilityを担保できる大豆のavailabilityに大きな制限がかかってきたことと、・・・』とは、どういうことでしょうか?と聞かれました。原料を扱う商社や飼料メーカーの人々にはよく知られた情報ですが、魚の生産者サイドにはまだまだ伝わっていないことがあるのでしょう。ノルウェーのアトランティックサーモン(アトラン)と濃縮大豆たんぱく質(SPC、Soy Protein Concentrate)を例にしてお話しすると分かりやすいかもしれせん。

日本では量的に極めて使用が少ない大豆由来の原料ですが、魚粉削減に強烈なパワーを発揮します。今日のアトラン飼料での低魚粉レベル約10%は、この原料なしでは達成できなかったでしょう。しかし他方では、主要産地であるブラジルでアマゾンを切り開き生産されてきた部分もありました。そこで業界はサプライヤーや環境団体などとの協議を重ね、今後は伐採拡大されない土地で生産されるSPCのみ(traceability)を飼料に使用することでsustainabilityを高めようとしています。そして、生産される土地が限られるわけですので自ずとavailabilityが制限されるのですが、それに加えて、このような強力な業界の枠組みでアマゾンのSPCが囲まれてしまうわけですので、部外者には入手困難なものになってしまうということです。ざっくりと簡単にお話ししましたが、ご理解いただけたでしょうか?もちろんSPCはnon-GMOです。

前回の補足にもなりますが、ノルウェー食品・漁業・水産養殖研究所(NOFIMA)の報告では、ノルウェーで使用される163万トンの飼料原料のうちの31万トン(19%)がSPCです。魚粉は19万トン(11%)ですし、次いで使用されるタンパク源の小麦グルテンで15万トン(9%)、コーングルテンで6万トン(4%)ですので、アトラン飼料におけるSPCの重要性が分かります。ただし、彼らにとっても、これ以上のSPCの確保は困難であり、しかも特定の原料への高い依存性によって飼料配合のflexibility(柔軟性)を損なうことになっています。何かの理由でSPCの入手が難しくなれば、飼料の製造、ひいては養魚自体が危ぶまれます。そういうことで、彼らにとっても、昆虫、微生物、藻類に代表される新規原料の開発と確保が重要ターゲットの一つになっているのです。

下は3月に出されたノルウェー水産物審議会(NSC)による飼料基準についてのアナウンスです。今回紹介したアマゾンについての説明もされていますので、ご参考にしていただければと思います。

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