ハワイのヒレナガカンパチ(その2)

先週のヒレナガカンパチの記事を紹介して思い出しましたが、海外で養殖されているヒレナガカンパチはKampachiとして流通していることが多いのをご存知の方もいると思います。ではどうして、例えば英名のAlmaco Jackというような海外での名前では流通しないのかをご存知でしょうか?昨年亡くなりましたハワイの友人Syd Kraulが以前教えてくれた歴史を短くご紹介します。

ヒレナガカンパチの種苗生産・養殖は1990年代にハワイではじまりましたが、現地の市場に出すにあたり彼らはKampachiという名前を使うことに決めました。これは、1)現地のヒレナガカンパチ(学名:Seriola rivoliana)を日本のカンパチ(学名:Seriola dumerilli)と同じ魚(種類)であると彼らが勘違いしていたこと、2)ハワイの現地名であるKahalaと同じ名前では、天然魚における寄生虫やシガテラ毒のイメージが市場から強く嫌厭されること、3)Kampachiという言葉の響きが日本食、高級感のイメージにつながり市場に受け入れられやすくなるといったことが理由でした。しかし、彼らがメキシコに種苗を輸出しようとしたときにあることが発覚します。それは、メキシコへの輸出はメキシコの外来種にあたるカンパチでは認められず、しかしメキシコに生息しているヒレナガカンパチであれば可能性があるということでした。実はハワイの海にはカンパチとともにヒレナガカンパチも生息しています。その時彼らは、「もしかすると自分たちの魚はカンパチではなくヒレナガカンパチかも?」と思ったのでしょう(実際、Kahalaというハワイ現地名はカンパチとヒレナガカンパチを区別しない)。早速、分類学の専門家のところに自分たちの魚を持ち込んで鑑定してもらうと・・・・、カンパチではなくヒレナガカンパチでした。今さら商品名を変えても・・・ということで、現在でもヒレナガカンパチはKampachiという名で呼ばれています。

ちなにみ、海外にはKampachiとKanpachiの2種の表記があることを知られている方もおられると思います。「m」と「n」の違いです。Sydの話を聞く限り当時の彼らは日本語の「ん」を聞いた音の感じでただ単純素直に「m」としただけのようですが、現在では「m」で商標登録されているため、海外でブランド化されているKampachiの名前は日本のカンパチでさえも使用することができません。ですので、商標権をもたないヒレナガカンパチやカンパチが「n」のKanpachiになっているようですね。

Wikiのページもご参照ください。

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