コロナと輸入物
6月に中国・北京の食品市場でコロナウィルス感染症のクラスターが発生しました。そのクラスター発生に輸入されたサーモンが関わっていた可能性をNational Science Reviewに掲載された論文(短報)が指摘しています。当時はマーケットから輸入サーモンが緊急撤去されましたが、その後は中国政府もその可能性は低いとして事態は収束に向かっていました。Undercurrent Newsが背景と論文の内容を分かりやすく解説しています。
論文によると6月11日に52歳の男性の感染が確認され、翌12日に112人の濃厚接触者と242件の環境サンプル(男性が訪問した場所からの)をPCR検査したところ、食品市場から採取した2件の環境サンプルから陽性反応を検出。直ちに市場に関わる558人の検査をして陽性の45人を確認。それを受けて6月15から終息間近の7月10日の間に1,000万人以上の市民、可能性の高い約9,400人、市場で働く約3,300人と市場からの約5,300の環境サンプルを検査して、169人の感染者と139件の陽性環境サンプルを特定。これらのデータと抗体検査など他の追加調査結果を詳しく検討して、汚染源となった市場内の販売ブースを特定するとともに、ウイルスが輸入サーモンを介してそのブースに侵入したことを強く示唆する結果を得ました。ゲノム解析の結果から今回のウイルスは中国株ではなく、欧州株起源である可能性が示されています。
感染拡大を食いとめ、発生から1ヶ月以内に終息させた舞台裏を垣間見ることができるエキサイティングな内容でもありますが、この論文のインパクトはサーモンだけでなく、さらに、中国だけでの話でもなく、世界を移動する流通物すべてがウイルスのキャリアになる可能性を含意しているところにあるでしょう。記事では北京当局が輸入されるコールドチェーン食品を追跡するためのトラッキングシステムの導入と、業者・企業に対するシステムへの速やかな対応を求める予定としています。論文と記事で指摘されているように、「物」に付着している程度のウィルス(量)で感染が成立するのか?などについての詳細な検討が待たれますが、このような追跡システムの世界規模での実装が食の安全確保と疾病コントロールのため求められる時代がすぐそこに来ているのかもしれません。
Chinese study supports theory imported salmon caused Beijing’s June COVID outbreak
A study of the Xinfadi market coronavirus outbreak by the Beijing CDC has pointed to imported salmon as the likely cause, a suggestion resisted by many in the seafood industry
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