レンサ球菌と自家ワクチン

レンサ球菌(Lactococcus garvieae)症に対する自家ワクチンの効果を示した論文です。日本の水産養殖では馴染みがない自家ワクチン(autogenous vaccines、autovaccines)、万能というわけではありませんが、ワクチンがない、ワクチンがあっても効果が薄い、新しい・珍しい病気で早期の対応が必要、血清型の多様化/抗原性の変化で従来のワクチンでは免疫が誘導できないというような場合、海外では製造と使用が認められて実際に成果をあげているカスタム・メイドのワクチンです。自社や近隣の漁場で発生している疾病をターゲットとして、そこで死亡している魚(サンプル)から病原体を分離し、それに対する効果をもつワクチンを比較的素早く、低コストで製造、入手して使えることが魅力です。もちろん各国それぞれで適応のための規則があり、製造・使用までのプロセスも異なりますが、これからの水産養殖の持続性を支えるための重要なオプションの一つと考えられています。自家ワクチン自体の歴史は古いものの、近年は見直しが進んで現在の技術で洗練され、改めて研究と産業化が促進されてきています。今回の論文でとりあげられているはティラピアですが、他の魚種、他の病原体による疾病に対しても自家ワクチンへの期待が高まっており、古くて新しい自家ワクチンが世界規模で水産養殖産業の発展に寄与していくと思われます。一方、日本における自家ワクチンの可能性とポテンシャルはどうなのでしょうか?「日本の法律では認められていません。」だけで議論されずに見解も示されないままであることが、自国の水産養殖産業にとって良いはずがないのは明らかです。

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