温度(水温)療法

魚の生産に携わると必ず遭遇するのが突然の疾病による魚(群)の減耗(斃死)です。もし、その疾病に対する有効な薬剤がなく、しかし直ちに対応しないと急激に魚が落ちると予想されるとき、あなたならどうしますか?陸上水槽、海面生簀、RASなど施設、魚種、魚の成長段階、疾病の種類などの違いによって選択するオプションは異なりますが、今ここでは、陸上施設で海産魚の種苗生産をしていて、ウィルス性神経壊死症(VNN)が疑われる疾病が発生しているとします。このウィルス性疾病は親魚の選別や卵・飼育水の消毒である程度は防除可能ですが100%ではありません。

種苗生産に関わる人の多くがまずの選択肢として思うのは、今回の記事で紹介されている高温(加温、昇温)処理でしょう。熱交換などの設備が整えられていない施設でもVNNの発生履歴がある場合、疾病発生時には一時的にでも魚を処理できる工夫を予め施しておきます。通常は飼育水を加温することなく種苗を生産する海外の現場では特に大切な準備です。

原因不明の疾病に対しても高温処理が効果的に働くケースがあることは昔から知られていました。理由が分からないままに魚が異常に行動しだしたり、斃死がすすんだりする場合にはまずの高温処理でしたが、この記事を読んだ後に調べると、意外にもその効果を科学的に検証して、そのメカニズムに学ぶという方向には研究が進んでいないようです(エビの研究は散見しますが)。恐らくこの記事で述べられているように熱ショックタンパク質の発現調整を介しての免疫誘導が部分的に関わっているのだと思われますが、記事の著者が指摘している通り、ある意味「ワクチン」としても利用可能な費用対効果に優れた技術にまで高められる可能性があり、このような観点からの研究の発展が望まれます。

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