海産魚養殖 in USA

 アメリカ本土での海産魚の養殖、これまでRASでの陸上養殖に注目が集まっていましたが、今回は海面養殖についての話題です。

カリフォルニア州サンディエゴでヒラマサ(カリフォルニアヒラマサ:Seriola dorsalis)の海面養殖を開始するための申請が出されました。先日の大統領令でお墨付きをもらったかたちですので、よほどのことがない限りは環境アセスメントをパスして、1~2年後には小規模ながらもヒラマサの養殖が始まるものと思われます。雇用と経済にも関わることですので、もし次の選挙で大統領が交代になっても中断されることなく継続されるでしょう。

養殖が開始されればアメリカ合衆国本土沿岸水域で初めてのこと。本土沿岸域での海面養殖の幕開けになると思われます。今回のヒラマサ養殖のまずの目標は年間5,000トンの生産です。出荷サイズは比較的小さいと思われますが、それだけに比較的良好なFCRを備え、また輸入されるブリ類よりも市場輸送にかかわるカーボンフットプリントへのインパクトが極めて小さい製品(魚)になる可能性があります。

ただし、サンディエゴはカリフォルニア州の街ですので暖かな海を想像される方も多いと思いますが実際は意外と水温が低い海域ですし、カリフォルニアと並び特別水域(Aquaculture Opportunity Area)に指定されたメキシコ湾岸水域ではハリーケーンなどの影響もあるかもしれません。

ですので、はじめからスムーズにアメリカ本土で海面養殖の生産を上げていくことは難しいと個人的には思いますが、それよりも心に留めておくべきことは、アメリカが国として海産魚養殖という産業を重視する方向に舵を切ってきたということです。

すでにハワイでは部分的に水域が解放されていますが、今後はさらにオペレーションの許可を取るためのハードルが低くなっていくことも予想されます。RAS建設・運用の気運もこれまで以上に高まってくるかもしれません。

海産物の80%以上を輸入に頼っているアメリカ。国内だけではなく、隣国メキシコ内であれ、他の中南米諸国内であれ、自らの影響下で海産魚養殖ビジネスの展開を促進し、それを国益につなげようとも自然に考え始めているでしょう。

アメリカの海産魚養殖の行方に注目です。

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