バクテリオファージ in RAS

 RAS(Recirculating Aquaculture Systems)での魚病の発生を予防するにはどうしたら良いのでしょうか?病原体を施設に持ち込まないように努めるのがRASを含めた陸上施設の鉄則ですが、そのようなセキュリティーをかいくぐり病原体が侵入して蔓延する可能性はゼロではありません。飼育水の大部分を循環処理し各水槽で共有するRASでは、たった一つの水槽への汚染が引き金になって病原体が瞬く間に他の水槽へも共有されて被害が拡大することになります。また、重篤な水槽の魚のみを薬剤などで処理したとしても、その水槽の水は排水処理しない限りシステム全体に循環(共有)されてしまうことになります。共有される飼育水への病原菌のコンタミは紫外線やオゾンでの殺菌処理で対応できるので大きな問題ないし、バイオフィルターに代表されるRASシステムへの薬剤処理によるへのインパクトは小さいとのコメントも聞きますが、それは規模が無いRAS施設でのケースです。今後は商業ベースでRASの大規模化が進むこと、そのようなRAS施設をオペレートする優秀な科学者と熟練の技術者が決定的に不足すること、また特にポスト・コロナでは卵・種苗ソースの多様化が避けられないことを考えると、新たに第三のオプションを考えておいて間違いはないでしょう。以前は日本でも研究がはやったバクテリオファージ(bacteriophage)ですが、最近ではRASの急速な商業化努力の拡大に伴って再びスポットライトが当たり海外で研究が活発化しています。バクテリアの薬剤耐性(AMR, Antimicrobial Resistance)の関係で脱抗生物質の動きがますます加速していますし、他の薬剤や物理的処理も魚の福祉(welfare)が重要視されてきているなかででは気軽に使用することが難しくなってくるでしょう。これらの観点からも応用が期待されるバクテリオファージは、RASでの養殖魚の商業生産を行っていくうえでフォローすべきトピックスの一つだと思います。

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