ゴキブリでの研究-エビとカニの遺伝子編集に応用可能か?
昆虫での話ですが、遺伝子編集を行うための材料(Cas9とRNA)を成虫(メス)に注射するだけで高効率に遺伝子編集可能なことを発見・開発したというニュースです。 昆虫の循環系が「開放系」であることが重要な要因の一つのようですが、それを聞いて「エビやカニの遺伝子編集にも使えるかも?」と思っているのは私だけではないでしょう。 例えば魚(マダイ)の場合は先ず卵に直接注入することで遺伝子編集を進めますが、昆虫(今回の場合はゴキブリ)では卵が硬い殻に覆われているため魚の場合のような注入方法は適用できませんでした。 エビやカニの卵はゴキブリのものとは違うものの、マダイの卵よりはかなり小さく硬いですし、ゴキブリの場合のように親エビや親ガニに注射できるとなると、一つ一つの卵に注入するよりも極めて効率的に多くの卵(稚エビ、稚ガニ)に処理が施せます。 開発に携わった研究者曰く、『私たちが開発したこのゲノム編集法は、本当に驚くほど簡単です(虫たちの方が驚いているかもしれません)。』 エビやカニでもこの技術を適用できるのであれば、遺伝子編集研究とそのエビ・カニ養殖産業への応用が一気に進むものと思われます。楽しみですね! 詳しい研究の内容について: 昆虫ゲノム編集のあたらしい形―成虫注射で「難敵」撃破― https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2022-05/220517_daimon-a4427beee3a93748b16d1838ae993bb1.pdf 論文DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.crmeth.2022.100215 昆虫を注射1本でゲノム編集 安価・容易に品種改良 京都大学の大門高明教授らは遺伝子を効率よく改変するゲノム編集を昆虫に簡単にできる技術を開発した。卵を産む前の成虫に注射をするだけですみ、高価な装置や長期間の訓練などは不要だ。ほとんどの昆虫種に適応できるという。昆虫食といった産業への利用や病原体を媒介しないようにして感染症の流行を抑えるといった応用が期待できるという。スペインの進化生物学研究所との共同研究で、17日に米科学誌に論文が掲載された。