養殖と養魚飼料のバージョンアップ
出荷前の半年を無魚粉化した飼料で仕上げる取り組み、とても興味深いですね。低(無)魚粉飼料の給餌は魚粉が多い一般的な飼料の給餌とは異なるストラテジーが必要なので、大変工夫されているのだと思います。ウミトロンさんとも協働されていましたので、これまでに築かれた技術にIoTやAIをうまく組み合わされて対応されているのかもしれません。 そして、工夫されているのはそのような精密給餌についてだけではないでしょう。飼料の詳しい内容は書かれていませんが、記事を読む限りはタンパク源をすべて植物性のもので代替されているようです。マダイの飼料のエネルギー密度はそれほど高くありませんので配合にもある程度の余裕を持たせやすいのですが、出荷に向けて魚を仕上げる大切な期間のタンパク源を植物性原料だけに頼るのですから飼料の配合設計にも従来とは異なる工夫が施されているのだと思います。 Colombo and Turchini (2021) を参考にすると養魚飼料は魚粉ベースのAquafeed 1.0から植物性原料を利用するAquafeed 2.0へバージョンアップし、現在では地域性を重視したサーキュラー・バイオエコノミー(circular bioeconomy)を活用するAquafeed 3.0へと進化しようとしています。日本で最初にその領域にチャレンジして到達するのも赤坂さんのような真面目で好奇心がある規格外な養魚家なのでしょうね。そのような養魚家には優れた協力者も自然と集まります。 * Colombo, Stefanie M. and Turchini, Giovanni M. (2021) ‘Aquafeed 3.0’: creating a more resilient aquaculture industry with a circular bioeconomy framework. Reviews in Aquaculture 13: 1 – 3. https://doi.org/10.1111/raq.12567 愛媛の赤坂水産、菜食マダイで挑む養殖業界「2つの壁」 マダイなどの養殖を手がける赤坂水産(愛媛県西予市)は、育成過程の一部で魚粉を使わない飼料を与えるブランドマダイの販売を始める。養殖業界では海外市場を中心に環境に配慮した食材への関心が高まっているほか、飼料の高騰リスクへの対...