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12月, 2019の投稿を表示しています

魚粉という原料

 私の仕事の領域で魚粉といえば養魚飼料の原料の一つですが、原産国では原魚種が人々の食糧になっているケースがあるのも事実です。このコンフリクト、急激な人口増加が予測されるなかで益々クローズアップされるようになってきました。国連のSDGsも大きく影響しているのでしょう。アフリカでは輸出用の魚粉の製造量の増大で、これまで伝統的に食されてきた小魚の価格が高騰して食用にはあまり回らなくなっているようです。小魚にはヒトにとって栄養学的に優れた微量栄養素やタンパク質が含まれています。特に子供が正常な発育する過程で重要な役割を果たす栄養素が多く存在します。魚粉製造という新たな産業が経済的な恩恵を原産国にもたらすことは良いことですが、同時に食用としても持続的に利用できるように上手く資源管理していくことの重要性が増してくるでしょう。これまでIUU漁業、違法労働、環境などの観点から論じられることが多かった魚粉。その原魚が食用としてもどれだけマネジメントされているのかなど、新たな視点からの評価が魚粉に対してなされてくるかもしれません。天然魚と養殖魚の両方がヒトの将来には必要なのですから。 How the global fish market contributes to human micronutrient deficiencies Fish retained for local consumption could boost public health.

クロマグロの人工種苗@高知県

すべてを人工種苗でとは言わないですが、「何割は人工で行こうよ!」という取り組みが政府+川上から川下の業界全体で行われないと、結局は改善や新規開発する機会も無くなって技術が衰退し、いつまでたっても天然種苗だけに頼ってしまう養殖から抜け出せなくなるでしょうね。 クロマグロの人工種苗事業が継続困難 需要なく民間撤退へ   高知県内の官民が共同で取り組んできたクロマグロ人工種苗の生産・育成事業が、来年度からの継続が難しく...

クロマグロ親魚水槽@スペイン

 スペインのテレビのサイトで国立研究所Instituto Español de Oceanografía(IEO)のクロマグロの陸上親魚RAS施設の映像がアップされています。私も設計を少しですが手伝っており、映像に出ている人たちと一緒に24時間クロマグロをつくり育てていましたので、施設がうまく稼働しているのを見て大変うれしく思っている次第です。さて、この施設には水槽が4基あり、そのうちの2基は直径22m、深さ9.5m、容積3,500m3、次いで直径20m、深さ8.0m、容積2,500m3と超大型です。日本では長崎県にある国立の西海区水産研究所にクロマグロの親魚水槽があり、その大きさは直径20m、深さ6.0m、容積約1,900m3ですので、これに比べてもスペインの水槽の大きさが分かります。日本ではその施設で2014年にクロマグロの産卵に成功しています。スペインでは沖の生簀で飼っていた親魚候補の魚が大きな嵐で死亡したため、この陸上施設に揚げることができなかったのですが、その代わりに現在水槽にいる魚が来年には産卵することが期待されます。この施設は現在EUで強力に進められている研究共同体構想のAQUAEXCEL 2020に参加しており、各国の研究機関や企業がこの施設を使用して、魚(クロマグロ)のことはもちろん、RAS(循環システム)オペレーション最適化のための水質や水量、ポンプ、ろ過、殺菌などの物理設備などについての研究と研修・トレーニングを進めることができるようになっています。世界的にRASのオペレーター(優秀な)が絶対的に不足しているのが現状で、このような実動しているRASで志ある人が研究やトレーニングの機会を得ることができるのはとても良いことだと思います。 Lab24 - Domesticando al atún rojo Lab24 - Domesticando al atún rojo

シングルセルプロテイン

養魚飼料の原料としてinsect mealとならび世界的に注目されているのが発酵プロセスを経て製造されるsingle cell protein、多くの企業や研究機関が開発競争の真っ只中にあります。これはデンマークのUnibio Internationalが三菱商事さんから投資を受けパートナーシップを結んだことを発表したプレスリーリースですが、今後もこのような企業間協力や投資が活発に続いて急速に拡大していく飼料原料分野になることは間違いないでしょう。例えばアメリカではCargillがこの分野は高い関をもち投資を行っています。魚粉の代替タンパクとしての持続性だけではなく、温暖化ガス削減に寄与できることも、これからの養魚飼料原料して要求される点をカバーできていると言えるでしょう。 Press release- Mitsubishi Corporation invests in, and partners with, Unibio Funds to further the global roll-out of Unibio’ protein-from-methane production technology. London & Copenhagen, 4 December 2019 – Unibio International plc has raised additional...

クロマグロの逃げ場

 深さ40メートルの生簀でクロマグロの赤潮被害を目指す試みが大分でなされているようです。クロマグロの赤潮に対する忌避行動については調べられていないと思いますが、ブリ(ハマチ)と同じように赤潮を鋭く感知するのだと思いますし、もともと生簀内で何か起こると底へ底へと向かう性格の強い魚ですので(冷たい水が底に入ると上がりますが)、こういうことからも生簀の水深をとることはプラスに働くのかもしれません。底方向に逃避するであろうクロマグロが、赤潮が分布しないと期待される水柱(水深)で大人しく遊泳し続けてくれるのか?他魚種よりも赤潮に対する耐性が低いと考えられているクロマグロが、どの種類のどの程度の赤潮濃度(細胞密度)で底方向へ逃避するのか?など、魚類行動学的なこともあわせてデータが取れてくると面白いですね。 大分のニュースなら 大分合同新聞プレミアムオンライン Gate 大分合同新聞プレミアムオンライン「Gate」では、大分県内ニュースを中心に速報、イベント情報や世界の主要報道などを掲載しています。