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12月, 2021の投稿を表示しています

2021年のサイエンスニュース

今年も終わり近くになりました。コロナ、コロナでうんざりすることが多かった年ではありましたが、オミクロンに対してもワクチンの効果がある程度期待され、また有効な抗ウィルス薬も処方可能になってくるという明るいニュースを年の終わりまでに聞けたのは良いことでした。これらの医薬品が量的、質的にもさらに充実して、世界的な規模でウィズ・コロナに向け加速することができる2022年になることを祈っております。コロナをはじめ、火星、遺伝子編集、異常気象など2021年を特徴づけたニュースをnatureが選んでおりますので、それをご紹介して今年最後の投稿にいたします。皆様、良いお年をお迎えください。 The science news that shaped 2021: Nature’s picks From Omicron to a Mars helicopter to an Alzheimer’s firestorm, our news editors choose the defining moments in science and research this year.

養魚飼料のCO2排出量

デンマークの養魚飼料メーカー Aller Aqua が飼料のラベル(表示票)とデータシートに二酸化炭素排出量の記載をはじめたとの報道です。環境フットプリントの算出に関わるEU委員会の厳格なガイドラインに基づき求められるものですが、今回の動きは環境に対する配慮をアピールするためだけのものではなく、環境への負荷を具体的数字で自ら率先して晒し(さらし)、透明性の確保と差別化を図ることによって、環境問題が絡んで一層激しさを増す競争での優位性を先取りしようとするものともいえるでしょう。Aller Aquaのweb siteをみると、確かに例えば yellowtail kingfish(ヒラマサ) の17 mm EP(CP 48%; CF 22%)でCO2-eq. with land use changeが1.24 – 1.39 kg/kg feed、CO2-eq. without land use changeで1.17 – 1.25 kg/kg feedと計算され記載されています。請求すれば算出過程などの詳細を含めたCO2レポートの提供を受けることができるとのこと。CO2排出量などの環境負荷に関わる数字は、これまで飼料や水産物の国際認証を受ける際に影(表に出ない形)で計算されるだけでした。単に原料や栄養成分だけでなく、環境フットプリントも考慮して養魚飼料を選択すべき時代に突入したようです。 Aller Aqua pioneers carbon emissions labeling on fish feed Danish company, Aller Aqua, is the first fish feed manufacturer worldwide to have CO2-value declared on its feeds.

天然種苗と人工種苗のバランス

ブリの人工種苗について鹿児島からの報道です。先月には大分県での同様の取り組みがニュースになっていましたが、天然種苗のモジャコ(ブリの稚魚)が大不漁の今年はマスコミの注目度も高いようです。養殖の種苗を天然に頼るクロマグロやカンパチでもいえることなのですが、天然種苗が捕れない年には人工種苗の必要性が叫ばれるのに、天然種苗が再び捕れだすとそのような叫び声がなくなってしまう歴史が繰り返されています。現実性に欠ける輸出重点品目として指定されたからということではなく、先ずは日本のブリの養殖生産、つまり国内消費と輸出向けの養殖ブリの生産の安定性を確保するという観点から進めていくべきことであり、それには人工種苗と天然種苗をバランスよく上手に有効利用していくという認識が必要です。日本の養殖ブリはノルェーのアトランティックサーモン(大西洋サケ)ではなく、海外で養殖が試みられている他のブリ類でもありません。日本の養殖ブリは天然種苗+人工種苗でそのニッチに安定性を担保するという意義ある独自路線を行けばいいのではないでしょうか。 追記:人工種苗と天然種苗については以前にも思っているところを書いておりますので、ご参照いただければ幸いです。 「 人工種苗はかっこいい? 」 「 完全養殖だけが養殖ではない 」 (リンクが切れていますが残しておきます) ブリ養殖の救世主になるか 鹿児島で人工種苗の生産本格化 稚魚安定供給に期待高まる(南日本新聞) - Yahoo!ニュース  鹿児島県が日本一の生産量を誇るブリ養殖に欠かせないのが、稚魚のモジャコだ。しかし、今年の採捕量は昨年の半分に低迷。来年以降のブリ出荷への影響が心配される中、養殖業者からは、親魚から採卵して育成する

ゲノム編集:社会と持続性への貢献

ゲノム編集は人為的かつ意図的に遺伝子を編集する点で従来の品種改良技術とは特異です。その特異性を和らげるためによく「自然でも起こる」というようなワードとともに紹介されることが多いですが、例えば欠失型編集は生物の遺伝子を人間がピンポイントで欠失させることであって、決して自然がそれを起こしているのではありません。私はゲノム編集技術とその農水産物への応用について大賛成なのですが、ヒトにデザインされたゲノムが自然のものとの同等性を持つかのように伝えられることが多い現状に対してはいささか閉口気味になっています。優れた技術だけにもっと自信と主張をもって伝え、伝えられる側もそれを素直に受け取ってもいいのではなでしょうか?また、しかし、その一方で、こういった技術がどのような目的で使用されているのかについて、もう少し踏み込んで捉えられることも大切かと思います。社会に有益であり、持続可能性の向上に貢献するのか?例えば、単に生産性の向上だけでなく、魚や作物の水温や気候への適応を助け、疾病に対する薬剤や農薬の必要性減らし、魚や作物の健康を大いに改善するのか?単に生産性の向上だけに動物の外観が大きく変更されたり、動物の福祉が損なわれたりすることはないのか?少し過熱気味になっているようにも感じる現状ですが、これらのことに対する冷静な判断がゲノム編集を行う側だけでなくそこに投資する側にも求められます。 (リンク切れしていますが残しておきます) https://jp.techcrunch.com/2021/12/03/startupbattle-2021-winner/ TechCrunch Tokyo 2021 スタートアップバトル優勝は、ゲノム編集で食糧危機を救うリージョナルフィッシュ:12月3日、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo 2021」はすべてのプログラムを終え、閉幕した。イベントの最後を飾ったのは、2日間にわたって開催された設立3年以内のスタートアップによるピッチバトル「スタートアップバトル」の表彰式だ。スタートアップバトル初日では、書類選考を勝ち抜いた..