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シガテラ毒

問い合わせいただきましたので、3週連続になりますがヒレナガカンパチについて。 天然資源量にはかなりの余裕があると聞きますが、なぜ養殖の対象として重要視されているのでしょうか? それは先週にも少しふれましたが、シガテラ毒の心配から漁獲・利用が進まないためのようです。しかし、シガテラは食物連鎖で蓄積されますので、養殖をすれば毒化せずシガテラの心配がなくなります。トラフグのテトロドトキシンの場合と同じです。でも、トラフグの場合よりインパクトがあるのは、トラフグは天然でも筋肉は無毒ですが、天然のヒレナガカンパチは筋肉も有毒でありうるということです。つまり、シガテラ中毒のリスクがある地域、国では養殖することによって初めて安心・安全なヒレナガカンパチを作出し市場に投入できるということです。魚類養殖の有用性がクリアに分かる良い事例ですね。 沖縄県でシガテラについての分かりやすいページが作成されています。「冷凍保存すると毒はなくなる」、「痩せた魚は有毒である」などシガテラに関する言い伝えも検証されていますのでご参照ください。 シガテラについて/沖縄県 シガテラとは、熱帯・亜熱帯のサンゴ礁の周辺に生息する魚によって起こる食中毒の総称として用いられます。  中毒の原因はシガトキシンなどの天然毒です。シガトキシンは、海草などに付着する渦鞭毛藻(うずべんもうそう)と呼ばれる微細藻の一種によって生産され、その微細藻を魚介類が食べ、食物連鎖によって魚の毒化が起こります。

ハワイのヒレナガカンパチ(その2)

先週のヒレナガカンパチの記事を紹介して思い出しましたが、海外で養殖されているヒレナガカンパチはKampachiとして流通していることが多いのをご存知の方もいると思います。ではどうして、例えば英名のAlmaco Jackというような海外での名前では流通しないのかをご存知でしょうか?昨年亡くなりましたハワイの友人Syd Kraulが以前教えてくれた歴史を短くご紹介します。 ヒレナガカンパチの種苗生産・養殖は1990年代にハワイではじまりましたが、現地の市場に出すにあたり彼らはKampachiという名前を使うことに決めました。これは、1)現地のヒレナガカンパチ(学名:Seriola rivoliana)を日本のカンパチ(学名:Seriola dumerilli)と同じ魚(種類)であると彼らが勘違いしていたこと、2)ハワイの現地名であるKahalaと同じ名前では、天然魚における寄生虫やシガテラ毒のイメージが市場から強く嫌厭されること、3)Kampachiという言葉の響きが日本食、高級感のイメージにつながり市場に受け入れられやすくなるといったことが理由でした。しかし、彼らがメキシコに種苗を輸出しようとしたときにあることが発覚します。それは、メキシコへの輸出はメキシコの外来種にあたるカンパチでは認められず、しかしメキシコに生息しているヒレナガカンパチであれば可能性があるということでした。実はハワイの海にはカンパチとともにヒレナガカンパチも生息しています。その時彼らは、「もしかすると自分たちの魚はカンパチではなくヒレナガカンパチかも?」と思ったのでしょう(実際、Kahalaというハワイ現地名はカンパチとヒレナガカンパチを区別しない)。早速、分類学の専門家のところに自分たちの魚を持ち込んで鑑定してもらうと・・・・、カンパチではなくヒレナガカンパチでした。今さら商品名を変えても・・・ということで、現在でもヒレナガカンパチはKampachiという名で呼ばれています。 ちなにみ、海外にはKampachiとKanpachiの2種の表記があることを知られている方もおられると思います。「m」と「n」の違いです。Sydの話を聞く限り当時の彼らは日本語の「ん」を聞いた音の感じでただ単純素直に「m」としただけのようですが、現在では「m」で商標登録されているため、海外でブランド化されているKampac...

ハワイのヒレナガカンパチ

ハワイのBlue Ocean MaricultureのヒレナガカンパチがASC認証を取得したようです。Blue Ocean Maricultureは現在のところ米国で唯一のブリ類養殖会社で、先日開催された水産庁(水産研究・教育機構)の勉強会でも紹介されていました。 ASCのFinal Reportによると漁場はハワイ島の西岸 19°26'45.0"N 156°02'12.6"W (十進法で19.44583333,-156.03683333)の潮通しが良い海域にあり、完全沈下式で2019年には502トンの魚を生産しています。生簀の容積は8,000 m3で、5基の生簀が240 m x 240 mのグリッド内に設置されています。水深は約60 m。モントレーベイ水族館のシーフード・ウォッチ・プログラムのGood Alternativeに続くASCの認証により、持続性の証明がより強固なものになるでしょう。 実はハワイは西暦1200年ごろから魚の養殖がおこなわれている歴史ある土地で、環境の保全が厳しく行われている反面、養殖とそれに関わるアクテビティが盛んなところです。SPF親エビも有名ですね。このようなハワイ特有の養殖を取り巻く環境が沖合養殖への飽くなき挑戦を続ける原動力にもなっているのかもしれません。座標をコピペしてgoogle検索していただくと漁場の位置を簡単に確認できます。 多くが挑戦して退いてきた沖合養殖。太平洋に向かい南~北西に大きく広がる通常の養殖なら不可能な海域で、彼らの技術が花開いて努力が実を結んだことを感じさせるニュースとも言えそうです。 First Finfish Farm in United States Achieves ASC Blue Ocean Mariculture has become the first ASC certified finfish farm in the US after achieving certification against the ASC Seriola and Cobia Standard at its Hawaii farm.

ブリ類養殖勉強会

私もオンラインで参加させていただきました。他の用件のために途中までしか聞けませんでしたが、海外におけるブリ類の養殖についての発表は、日本語での代読内容も奇麗にまとめられており、国外でのブリ類養殖の広がりを参加者が理解しやすいように工夫されていると思いました。ただ、他の発表の時間などの兼ね合いもあるのだと思いますが、海外で生産されているブリ類の成長、FCR、マーケットサイズ、売値に関することなど、泥臭いですが産業には不可欠な情報を鮮度よく提供していただけたらなと感じました。このような情報は海外と仕事をしていれば入ってくることもありますが、国内の産業界に広く提供するにはやはり国(水産庁)が積極的に情報を収集してそれを分け隔てなくシェアするのが一番いいと思います。そのためには、勉強会での発表数を、例えば今回のように内容が異なる5題ではなく、1つの大題目について2~3つの筋が通った小題目にして会の焦点を明確化するということも良いのではないでしょうか。また、回ごとに必ずテーマを変えていくこともないのかもしれないですね。 米国でブリ類養殖増産、ハワイは2400トン計画/水研機構勉強会 水産業と漁業に関するニュースを提供している。