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12月, 2020の投稿を表示しています

2020という年

新型コロナで始まった2020年。ピンチをチャンスというよりも、ピンチでチャレンジせねばという年でした。こういう年でなければ挑戦することもなく終わったことも多かっただろうと思うと、ある意味、意義深い年でもあったと感じます。例えば、リモートで参加したプロジェクト。内容については詳しく言えませんが、リアルタイムにディスカッションしたり魚をチェックしたりと、現在のテクノロジーを使えば「できるだろうなぁ」と以前からぼんやりと思っていたことを実際に「やる(せねば)」というきっかけにもなりました。プロジェクトは世界的な評価を得る大成功。時差も乗り越えたこういうチャレンジを強制的にでも与えてくれたのが2020年という年であったと思います。 新型コロナは人々の生活や産業界に大きな影響を与え続けていますが、一方で、ワクチンの開発、接種の開始など明るいニュースも届き始めています。新しい年2021年が皆様にとって佳き年、明るい年でありますように。

海水で野菜(つづき)

先日、海水でのアクアポニックスについて書きましたが、「アイスプラントという植物が試されていますよ」と教えていただきました。また偶然にも、先週web開催された水産工学会のシンポジウムでもアイスプラントにふれられた発表があり、勉強になったしだいです。確かに「アイスプラント アクアポニックス」で検索してみると、なるほど、、、東京海洋大学が科研費でクエのRASとの相性を検討し、民間では小規模ながらも栽培されはじめているようです。塩分に強いといっても全海水の塩分では難しいようで、だいたいのところ1/3海水以下の塩分でないと元気に育たないようなかんじですね。海産魚のRASでは浸透圧調整にかかるエネルギー消費を低減させ、それを成長につなげるために、意図的にその程度の低塩分を適用する場合があります。飼育水の塩分を下げるためには専らサニタリーの面からも水道水が使用されるようですが、換水率を低く抑えられる最近のRASではそのためのコストもペイできるのかもしれません。ただ、塩生植物であるアイスプラントは細胞に塩分をため込む性質があり、食べると少し塩味がするとのこと。佐賀大学のグループが塩味を残しつつもカリウム含量を高くして塩分摂取過多の人でも安心して食べれるアイスプラントの栽培法を目指していますが、塩分のあることが味へのプラスとして考えられる反面、野菜としてはマイナスに捉えられがちであることがうかがえます。今回紹介する日本植物生理学会のQ&Aのページでは通常の植物(イネを代表として)では塩分0.3%(1/10海水)ぐらいまでが問題なく生育できる限界値。やはり、トマトやレタスを栽培するにはイノベーションが必要のようです。 植物 Q&A 植物の耐塩性について | みんなのひろば | 日本植物生理学会 はじめまして。 植物の耐塩性について質問させていただきたいのですが、一般に耐塩性を持たない植物が生…

海水で野菜

海水の陸上養殖(RAS)で野菜をつくれないかと考えているのですが、これまで海藻での報告はあるものの、私が思うトマトやレタスのような野菜では試されてないのか、なかなか情報がでてきません。やはり海水だけに塩分の問題が第一あるのかもしれません。塩分に耐性があるような品種を従来からの方法で作り出しても、海水塩分では高すぎて厳しいような気がします。はやりの遺伝子編集でどうでしょうか。。。できたとしても、自然環境への影響や倫理上の問題もでてくるかもしれませんし。。。というようなことを考え、いろいろと探っておりますと、水と野菜をフィルムで隔てただけで野菜の栽培が可能になる技術があることを見つけました。フィルムが土の代わりをするとのこと。すごいですね。大変面白いと思います。全くの素人なのでよくわからないのですが、このフィルムに海水の「塩」を通さない(しかし、栄養素は通す)機能を持たすことができれば、海水RASでの野菜アクアポニックスの可能性も見えてくるのではないでしょうか?日本でも海外でも海産魚のRASの建設ラッシュが始まっています。淡水魚RASのようなアクアポニックスの技術がなかなか出てこないなかで、海産魚RASでは排出される有機物の処理をもっぱら機械・物理的な方法で賄おうと進んでいます(微生物は活躍しています)。海藻でのアクアポニックスももちろん考えられますが、多くの人が毎日のように食べるポテンシャルがあるものでなければ、ビジネスできるほどの規模で導入することは難しいでしょう。海水でのアクアポニックス。ほかにも何かアイディアあればぜひ教えてください。 世界の農業に光 市内企業の技術 ケニアへ | 平塚 | タウンニュース 市内中原の「メビオール株式会社」(吉岡浩社長)が開発・販売しているフィルム農法「アイメックシステム」がこのほど、国際協力機構(JICA)の「中小企業・SDGsビジネス支...

テナガエビ養殖-日本発なるか?

テナガエビの養殖は世界の養殖業界でトピックスの一つになっています。ブラックタイガーやバナメイとは異なるニッチで急成長しており、中国ではオニテナガエビの生産量が15万トン近くにまでなっていると聞きます。日本のテナガエビはオニテナガエビよりも小さい種類ですので食べ方や調理方法も変わってきますが、美味しいのには変わりありません。同じ大きさでの個体を食べ比べたことはありませんが、マーケットサイズで日本のテナガエビがオニテナガエビよりも殻が柔らかく食べやすいとか、身が甘くて食べやすいとかの特徴があれば、海外に輸出しても十分に戦える養殖対象種になるのではないでしょうか?オニテナガエビでは産学官での育種のプログラムが大きく進んでおり、生産量(大きさ)や耐病性を高めた品種が作出され始めていると聞きます。また、RASやバイオフロック技術を利用した複合養殖のパートナー種としてもオニテナガエビの注目度が上昇してきているようです。今回のミナミテナガエビでは高知大学との協働が進められるということですので、民間からの投資や技術協力も呼び込んで、早い段階から育種の促進や養殖技術の開発に注力し、それと並行して速度良くビジネスの独立が成されればと注目しています。 https://www.sankeibiz.jp/business/news/201209/bsm2012090853013-n1.htm (リンクが切れていますが残しておきます)

魚粉を賢く使う大切さ(補足)

先ほど紹介したTBS NEWSの動画が開かないとの連絡がありましたので、youtubeでの動画もご紹介いたします。 養殖のエサになる魚も…乱獲の実態【SDGs】 シリーズ「SDGs」。今回のテーマは「海の資源=魚」です。健康志向もあり世界的に需要が高まる中、魚の獲りすぎ、いわゆる乱獲が問題となっています。実態を探るべく私たちが向かったのは西アフリカのセネガル。問題は私たちが直接口にする魚だけではなく、「養殖用のエサ」になる魚にまで発展しています。(news23 2020年...

魚粉を賢く使う大切さ

おおよそ1年前にNatureの記事「How the global fish market contributes to human micronutrient deficiencies/ヒト(人間)の微量栄養素欠乏に対する魚の貢献」を紹介し、途上国で生産される魚粉の役割と価値について考えました。今回紹介するTBSテレビのシリーズ「SDGs」の動画は、実際に現地においてどのようなことが起こっているのかをレポートしたものです。いろいろなことが複雑に絡み合っている問題ですので難しいレポートだったと思いますが、短い時間で上手くまとめられています。どうしても魚粉を否定してしまう論調になってしまうのは、内容のバランスをとる難しさによるものでしょう。下に昨年の記事紹介を再掲載しました。大切なことは上手く賢く持続性をもって魚粉を使っていくことだと思います。 2019/12/23のNature記事紹介 私の仕事の領域で魚粉といえば養魚飼料の原料の一つですが、原産国では原魚種が人々の食糧になっているケースがあるのも事実です。このコンフリクト、急激な人口増加が予測されるなかで益々クローズアップされるようになってきました。国連のSDGsも大きく影響しているのでしょう。アフリカでは輸出用の魚粉の製造量の増大で、これまで伝統的に食されてきた小魚の価格が高騰して食用にはあまり回らなくなっているようです。小魚にはヒトにとって栄養学的に優れた微量栄養素やタンパク質が含まれています。特に子供が正常な発育する過程で重要な役割を果たす栄養素が多く存在します。魚粉製造という新たな産業が経済的な恩恵を原産国にもたらすことは良いことですが、同時に食用としても持続的に利用できるように上手く資源管理していくことの重要性が増してくるでしょう。これまでIUU漁業、違法労働、環境などの観点から論じられることが多かった魚粉。その原魚が食用としてもどれだけマネジメントされているのかなど、新たな視点からの評価が魚粉に対してなされてくるかもしれません。天然魚と養殖魚の両方がヒトの将来には必要なのですから。 【SDGsプロジェクト】養殖のエサになる魚も…乱獲の実態 │ TBS NEWS 【現場から、】SDGs 2030年の世界へ TBS NEWS 【現場から、】SDGs 2030年の世界へのサイトです。