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7月, 2020の投稿を表示しています

完全養殖だけが養殖ではない

どうしても話の流れで完全養殖こそとの記事になってしまうのかもしれませんが、水産養殖は人工種苗だけでなされるのもではなく、天然種苗も上手に利用して行っていくものだと思います。科学的知見に基づく資源管理と、それを官民協力して確実に行いさえすれば、例えば地中海のクロマグロのように天然魚でも上手く養殖に利用できるようにと種々のハードルを乗り越え、安定した雇用と食品(食料)を生み出す産業になるのです。完全養殖は素晴らしい技術ではありますが、日本でこれがクローズアップされるのは、一方で天然種苗を先述したような高い水準で管理利用できていない居心地の悪さからもきているでしょう。日本で天然種苗への依存度が極端に高い養殖といえばクロマグロ、ブリ、カンパチですが、その資源管理と養殖利用の検証はどうでしょうか?意味のない数字で天然種苗の捕獲数を制限したり、記録したりだけで終わっていないでしょうか?海外からの激しい突っ込みが入っても、正々堂々と天然種苗を利用できる状態であるのか?あるいはその状態でなければそれを計画的に達成する戦略を国レベルで立てましょう。養殖魚の成長産業化はこういうところから始めなければ成し遂げられないと思います。完全養殖を謳うのは簡単ですが、天然種苗の有効利用を突き詰めるのも水産養殖という産業です。皆さん忘れていませんか?  水産資源、世界では3割が乱獲 完全養殖こそ将来担う|出世ナビ|NIKKEI STYLE マルハニチロは4月1日付で池見賢氏が社長に昇格した。6年ぶりの社長交代は、新型コロナウイルス拡大という逆風下での船出となった。飲食店向けの水産物や業務用食品が、来店客の減少などにより打撃を受けており、海外での成長確保が一層重要になる。中期的…

エクストルージョン/エクストルーダー集中講義

Aquaculture Feed Extrusion, Nutrition, & Feed Management テキサスA&M大学とゲストによる集中講義(コース)、今年はオンラインでの開催です。興味深い内容のものも多いのですが、普通の米国時間での開催ですし、5日間ビッシリやるので翌日仕事の方にはお勧めしません。。。。が、ご参考ください。スポンサーはWengerです。 Howdy: I hope you are doing okay in this difficult time. Some time ago you inquired about our Annual Aqua Feed Extrusion and Nutrition Short Course short Course. Because of current pandemic and COVID 19, Texas A&M University is closed and we are offering this course LIVE  on line from Aug. 31 to Sep. 4, 2020.  Please see attached information about the course and registration is open. You may want to register using this link. https://teesedge.tamu.edu/extrusion/aqua... Let me know if you have any question or need more information. Regards Mian N. Riaz, Ph.D, CFS Holder of the Professorship in Food Diversity Food Science and Technology Dept.   Professional & Continuing Education Texas A&M Engineering Experiment Station (TEES) Extrusion Technology Program   Texas A...

2030年のターゲット@@

2030年のターゲットが、ブリで2018年の10倍の1,600億円、マダイで120倍の600億円。達成しなかったらどう責任取るのでしょう。コロナ前からの計画を引きづっているところもあるのでしょう。コロナで海外向けのブリはどうなっているでしょうか。国内のマダイの相場はどうなっていますか。変化しないものと、変化したもの、変化していくものを見極め、世界の情勢も踏まえて現実的に達成可能で利益が確保できるターゲットに変更すべきです。一方で、サケ・マスの国内増産はポテンシャルがある良いオプションの一つだと思います。楽しみです。 農水省 ブリ類など養殖業強化の重要品目に|日テレNEWS24 農林水産省は、将来的に、国内外で需要の拡大が見込まれるブリ類やマダイなどを、養殖業を強化するための重要品目とする戦略を発表しました。

制限給餌および飼料への加水の有無がギンザケの成長に及ぼす影響

制限給餌および飼料への加水の有無がギンザケの成長に及ぼす影響 https://doi.org/10.2331/suisan.19-00025 実験系、データ、考察をどう理解して捉えるか?読み手にも客観性が必要です。 制限給餌および飼料への加水の有無がギンザケの成長に及ぼす影響 ギンザケ養殖の給餌の省コスト・効率化を検討するために,従来の加水飽食給餌に対して,加水制限給餌および無加水飽食給餌で水槽飼育したギンザケの成長と増肉係数を比較した。乾燥重量ベースで飽食区の8-9割程度を与えた加水制限給餌では,終了時の平均体重が加水飽食給餌の0.95倍であったが統計学的な有意差はな …

RASと人材

人材。RASでの成功もこれなしではありえないでしょう。とはいっても、RASに長けた人材などいない。あたりまえです。歴史は古くとも急速に発展したのはここ10年でのことですが、この流れについていけていないということでしょう。これからのRASで人材とは世界感覚で学びの場と時間を与えて効率的に育成するものであり、また事業者自らも柔ら頭で世界と関係をもって見聞を広め、自分自身を新たな観点から育成できるかにあると思います。 サーモン広がる陸上養殖、丸紅など ファンドも触手 サーモンの陸上養殖が世界的に広がっている。アジアを中心とした生食の需要が増える中、大半を供給してきた海上養殖は適した漁場が限られ、欧州などの環境規制でこの先の大きな増産が難しい。近年は環境負荷の少ない陸上養殖に注目が集まり、商社や投資ファンドが殺到している。■海上養殖に環境規制の波国連食糧農業機関(FAO)と農林水産省の調べによると、2017年の世界のサーモンなどサケ・マス類の養殖量は348万

エクストルーダーの科学

明日のことで恐縮ですが水産飼料のエクストルージョン(エクストルーダー)についてのコンファレンスがオンラインであります。米国中部標準時で午前6時からということは日本では20時からです。1日計3時間ちょっとのですので睡眠は確保できそうですし、一つのトピックスも30分前後ですのでテンポも良さそうです。水産飼料には20種に近い原料が配合され、それぞれで物性が異なりクセがありますし、主要な原料は生もの(なまもの)ですので、それらの混合物から温度、圧力、速度など多くのパラメータを制御して最高の成型製造を目指すエクストルージョン技術は水産養殖分野での立派な「科学」の一つとみなされており、教育、研究、開発が活発に進められています。エクストルーダーに関わったことがなければ難しい内容のプレゼンもあるようですが、水産飼料の製造技術でここまで盛り上がることは日本国内では無いですし、今回はオンラインでの開催ですので、どのようなかたちでも「飼料(エサ)」をさわる・に携わる方々にとっては水産飼料の製造ということを知るいい機会だと思います。例えば「この原料を使えば良い飼料(エサ)ができるでしょう」だけでなく「この原料を使って良い飼料(エサ)をつくるにはこうしましょう」と考えるべき流れを感じることができでしょう。 Aqua Feed Extrusion Conference UPDATE: The Aqua Feed Extrusion Conference is now taking place as an ONLINE CONFERENCE on July 8-9th, 2020. The Aqua Feed Extrusion Conference, co-organised by International Aquafeed, Dr Mian Riaz of Texas A&M University and VIV is once again taking place on July 8-9th, 2020. The conference will be hosted as an online event over the course of two days.This rendition of the conference will specialise in extrusion...

魚やエビは魚粉を必要としているのではなく

「The Current and Future Outlook of Aquaculture and Aquaculture Nutrition」との題でAlbert Tacon博士のプレゼンテーションです。Webinar後半のデスカッションやQ & Aを含めると1時間半の長さになりますが、プレゼンテーションでは最新のFAO統計に基づいた水産養殖産業の現状やそこから見える将来像を、また人それぞれの見方や考え方があると前置きしつつも水産養殖産業が向き合うべき課題、例えば魚粉・魚油代替原料の開発、R&D施設の重要性、原料のポテンシャルを引き出すための工夫など、を養殖魚類栄養学の研究者の立場から述べています。水産養殖のヒト(人間)への食の供給と健康維持のための役割と重要性についても自らの大学とFAOでのキャリア・経験を踏まえて語っており、分かりやすく、ためになる「講義」に久しぶりに出たなという感覚になりました。Tacon博士といえば「魚やエビは魚粉を必要としているのではなく、、、、」の言葉でも有名な研究者ですが、このように手軽に好きな時間にインターネットを通して講義を聴ける大変便利な時代になりました。後半では各代替タンパク源の特徴と課題、バイオフロック技術とRAS技術との比較、またGMOの捉え方についてゴールデンライス(golden rice)や消費者への利益を絡めたデスカッションもあり、水産養殖を志す若い人達が経験と実績を持つ老練研究者の考え方を聞く良い機会のWebinarであるとも思います。  The Current and Future Outlook of Aquaculture and Aquaculture Nutrition 1 Albert Tacon gives a presentation on the current and the future outlook of Aquaculture and Aquaculture Nutrition