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続・二社のタッグ:アトランティックサーモン陸上養殖

以前にも紹介した三菱商事さんとマルハニチロさんとのサーモン陸上養殖事業です。いよいよ本格的に始動というところでしょうか。現時点では海外に依存せざるを得ない飼料原料や育種種苗(卵/稚魚)の国内生産と調達、海外のものと十分に競争あるいはそれを卓越するレベルのRAS技術開発、生産される魚の動物福祉への対応と普及。国内の関連する分野や産業にも良い影響を与える触媒的な取り組みになるとも言えそうです。 三菱商事とマルハニチロ、富山でサーモン養殖 三菱商事とマルハニチロは18日、富山県入善町でサーモンを陸上養殖する新会社「アトランド」を設立したと発表した。サーモンは回転ずしなどで人気の魚だが、大半を北欧などから輸入している。入善町の冷たく清浄な海洋深層水を活用し、最先端の技術も導入しながら養殖する。2025年に施設稼働、27年から2500トンの出荷を目指す。完成すれば国内最大規模のサーモン養殖施設の一つとなる。世界でサーモン養殖・販売を

エビの疾病と行方 in 東南アジア

EMS/AHPNDやEHPといった疾病による被害は東南アジア全体でみられますが、生産量の約8割をバナメイに依存するタイは比較的大きなインパクトを受けています。そのため、これらの疾病に耐性を持つバナメイ種苗の育種プログラムも活発に推進されており、その中では遺伝子編集によるものも検討されていると聞きますが、それと並行して、もともとこれらの疾病に強く成長や飼料効率といった点でも育種が進められているブラックタイガーへの回帰も進むと考えられています。このように改良されていくバナメイとブラックタイガーを上手に組み合わせることで東南アジアの養殖産業が安定してより活性化していけばいいですね。 エビ輸出大国、タイに異変 伝染病流行で生産量半減 タイでエビの供給不足に懸念が強まっている。伝染病の流行が主な原因で、2022年の生産量はピークの半分程度に落ち込む見通しだ。政府や民間団体は海外からの緊急輸入でまかなう方針だが、肝心の生産増に向けた対策は後手に回る。供給不安が続けば、日本など海外市場にも影響が及びかねない。「輸入許可は全ての利害関係者の合意によるものだ」。タイ水産局のチャルームチャイ氏は9月上旬、タイメディアを前にこう訴え、自

腸の中の舌:魚類の味覚

魚は口(くち)*だけでなく消化管にも味を感じる細胞(味細胞:あじさいぼう)を持っているようです。発生に伴って初めに消化管のものが出現し、遅れて口に出現。先行している哺乳類の研究でも考えられているように、進化の過程で味細胞が消化管から口(舌)とあたかも分布を広げるように配置されたことを反映しているのでしょう。まず口で美味しいか?危険か?など判断してから食べたほうが安心安全で効率が良いからという進化上の理由からなのでしょうが、消化管での味覚との連携についての研究はまだまだこれからのようです。消化管と口の味覚にどのような協調が存在して消化吸収に関わるのか?私たちのフィールドでの「喰わないね」、「よく喰うね」などの裏側にはそのようなメカニズムが存在し、それを解き明かすための基礎研究の推進がこれからの養殖の発展に不可欠でしょうね。 *魚類の味細胞は口腔に限らず広く分布している場合が多いですが、ここでは便宜的に「口」という言葉を使いました。 Fish can detect flavors in the gut A Spanish team of researchers describes for the first time the development of the taste system of seabream from its embryonic development to adulthood.