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挑戦すべき養殖:タコ

「今後挑戦するとしたら何の養殖ですか?」と聞かれることがあります。まずは、ミナミマグロとキハダ(マグロ)。これまでクロマグロとタイセイヨウクロマグロはしてきていますので残りのミナミマグロをすればクロマグロの仲間をコンプリートすることができますし、養殖したキハダは脂(あぶら)ののりが絶妙で、クロマグロとは異なる飽きのこない美味しさを楽しむことができます。そのほか魚では、海水ティラピア。ブレイクすること間違いなしとみており、遺伝子編集などのツールを利用して海水への耐性や肉へのうまみを一層付加することによってそのポテンシャルをさらに高めることができると思われます。ただし、再生産(受精~卵~仔稚魚)はあくまでも淡水でのみ行えるものとして制限することが必要でしょう。 さて、「魚以外ではどうでしょうか?」と聞かれれば、答えはこの記事でも紹介されているタコです。トレンドを考えればエビは外せないように思われるかもしれませんが、エビは集約~半集約~粗放的の全ての方法で標準的なプロトコルが出来上がっており、ここでいう私の中での「挑戦」とは別の部類のものです。 以前もお話ししたように 動物福祉の観点から「知性」が高いとされるタコの養殖については反対の意見もありますが、生きとし生けるもの全ての命の尊さを想うとそのような批判は決して的を射たものではありません。「タコ焼きのタコこそ培養肉で」という声も聴きますが、タコ焼きだけがタコ料理ではなく、タコ料理の世界的なバリエーションを考えると培養肉だけで需要を賄うことはかなり難しいと思われます。タコ料理には墨(すみ)を使うものもありますしね。 しかし、私が挑戦するまでもなく技術はかなり進んでいるようです。記事でも書かれているように事業化に向けては解決すべき課題が多く残されているもの事実でしょうが、ガザミ幼生を給餌するというブレークスルーを経て現在の優れた飼育レベルを達成されていることをみると、技術開発をさらにスピードアップするためのしっかりとした土台を構築されてきているもまた事実だと思われます。どのように進展されていかれるか楽しみで、近い将来、養殖されたタコが世界の需要を部分的にでも支える日が来ることを想像すると本当にワクワクしますね。 「築地銀だこ」ホットランドが挑む 脱・たこ焼き一本足 たこ焼き店「築地銀だこ」が今年、1号店開業から2...

サバではだめで、アジでなければ「いや!」

ペンギンやカワウソのもともとの食性について詳しくは知らないですが、サバではだめで、アジでなければ「いや!」ということのようです。確かに両魚種で味や食感が異なるでしょうから、そのような違いがペンギンやカワウソの嗜好性に影響を与えているのだと思いますが、大きくはサバに対して慣れていないことによるものでしょう。 これらの動物と魚を同列にはちょっと無理があるかのかも知れませんが、例えば、養殖クロマグロはサバを好む傾向にあるものの、慣らしさえしていけばアジもまぁまぁ食べるようになりますし、イカに対しても初めは吸盤が顔(マグロの)に触れるだけでかなり嫌がり咥えることもしませんが、何かの拍子にその味をしめると大好物になります。 このようなことは養魚用配合飼料についても言えることで、動物性・植物性タンパク源の種類や配合割合などが変われば、飼料に対する魚の嗜好性も「不慣れ」なためにガラッと変わり、極端なケースでは「全く食べない」ということもありますが、プロフェッショナルな養魚家は新旧飼料を混合しながら時間をかけて馴致したり、そもそも内容が違う飼料であれば給餌方法や頻度にも異なる工夫が必要であることを理解していたりして、上手に対応します。原料の不足や高騰で飼料の内容に大きな変化が起こっている今日、これまでこのような経験を積んできているのか?の差が養殖効率に大きな影響を与えているはずです。 ペンギンもカワウソも慣れればサバを食べるでしょう。少なからず食べる個体がいることも、私の楽観的な予想を支えてくれています。食べない個体に「美味しいのかな?」と思わせるもの大切です。 物価高で水族館のペンギンに異変「アジがいい」エサ代替品のサバには目もくれず(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース  止まらない物価高。苦しんでいるのは人間だけではありません。水族館ではペンギンにも異変が起きていました。  箱根にある水族館。ここでも物価高の影響が。ペンギンなどの餌(えさ)、アジです。3割ほど値

二社のタッグ:アトランティックサーモン陸上養殖

日本を代表する二社のタッグに期待です。 三菱商事さんのCermaq(セルマック)は確かにアトランテッィクサーモン養殖のノウハウを持ちますが、いまのところそれは海面でのことに限られていますし、マルハニチロさんは多くの魚種で養殖事業を手掛けられているものの、アトランティックサーモンを自ら経験するのはこれからの段階です。おそらく初めは手さぐり的なところもあるかと想像しますが、二社が協働することで生み出されるシナジーとリスクヘッジを最大限に利用し、そこで速やかにRAS養殖技術の洗練化と魚の養殖特性について理解することが、この事業の発展には欠かせないものになるでしょう。大型RASで安定的に事業展開されている例は 未だに無く 、世界的にも注目を集める今回のアナウンスになると思います。 ちなみに、記事ではRASシステムの設計・構築をどこが担当するのかについて言及はありませんが、これも大きな関心事ですね。 三菱商事とマルハニチロ、サーモン陸上養殖の新会社 三菱商事とマルハニチロは30日、富山県でサーモンの陸上養殖を共同で行うと発表した。10月にも合弁会社を設立し、加工前のサケに換算し2500トン規模の養殖施設を建設する。総事業費は約110億円を見込み、2027年度からの出荷を目指す。デジタル技術を活用した養殖システムで、国内で安定して効率的に生産できる体制をつくる。新会社「アトランド」(富山県入善町)は三菱商事が51%、マルハニチロが49%出資