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4月, 2022の投稿を表示しています

スシローの養殖

新しい取り組みとして注目を促している記事ですが、これだけでは全体像をつかめないので今後の動きですね。プレスリリースをみると養殖会社の社長が今回の新会社の取締役も兼ねることになっており、商売の形態としては目新しくはありません。ボリューム、スケールメリットというよりはインテグレート化やゲノム編集といった新規技術の現場への導入に向けた第一歩なのかもしれませんね。 スシロー、養殖の新会社 回転ずし「スシロー」を展開するFOOD&LIFE COMPANIESは21日、養殖事業を手掛ける新会社を設立したと発表した。エサの調達や販売、魚の品種改良などに取り組む。回転ずし業界は漁獲量の減少や漁業の人手不足、魚の価格上昇などで将来の安定調達に不安を抱えている。安価で品質の良い魚を安定して仕入れるため、養殖事業に関わる。F&LCと養殖事業を手掛ける拓洋(熊本市)が出資して、マリンバース(熊

おざなりの動物福祉

アニマルウェルフェア(動物福祉)に対する国の認識を嘆いている記事ですが、そこで紹介されているような非公開の意見交換会でさえ、私の知る限り、水産養殖物については開催されたことがありません。人は体温がある温かな動物に憐れみを感じやすいこともあってか、体温がなく冷たい動物の魚類に対するアニマルウェルフェアについてはどうしても後回しになってしまい、確かにそのような歴史は欧米でもありました。しかし、今ではアトランティックサーモンをはじめとする主要な養殖魚について活発な議論がなされており、ASCやBAPといった水産養殖物認証への組み込みも現実的なものになってきています。 国は「養殖業成長産業化に向けた総合的な戦略」で2030年の北米、アジア、ヨーロッパへの輸出目標額を、ブリで2018年の10倍の1,600億円、マダイで120倍の600億円に設定しています。実現性の有無はさておき、それに向けて可能な限りブリやマダイの輸出を増やすためには、国際的な水産養殖物認証を獲得して維持することがますます必要で重要なものになってくるはずです。そして、それらの基準の設定に日本の意見や事情を反映させていくためにも、国の主導のもとで水産養殖物のアニマルウェルフェアに関する議論を始めるべきギリギリの時期に差し掛かっています。 「動物福祉を推進したところで消費者の選択につながらないので意味がない。畜産家のコストが増えるだけだ」とは記事で紹介されている農水省幹部の畜産物に対するコメントですが、水産養殖物についていうと、そこをやっていかなければ、選択されなくなるのは日本なのではないでしょうか。 註:養殖魚の福祉については昨年1月にも 記事 を書いていますのでご参照ください。 おざなりの動物福祉 「ビジョンない」農水省 「具体的なビジョンはない」と農林水産省の幹部自らが認める。家畜にとって快適な飼育環境を整えるアニマルウェルフェア(動物福祉)。吉川貴盛元農相が収賄罪に問われた事件で取り沙汰されるようになったテーマだ。動物福祉の向上には施設の改修など投資が必要で、畜産家は負担が増しかねない。検察側は、吉川氏が鶏の飼育に関する国際的な指針案について反対意見をまとめ、鶏卵業者を利するよう動いたとみている。農水省

ASCのパブリックコンサルテーション:Feedback webinar

今週の6日、7日にwebinarにて開かれたASCのパブリックコンサルテーションに参加しました。仕事の都合と興味の範囲もあり全てのセクションを聞いたのではありませんが、養殖産業に関わる国内の各分野からおおよそ30名の参加がありました。 ASCサイドの各事項に対する説明や参加者からの意見を汲み取る姿勢は、誤解を恐れずに言うと以前よりも格段に改善されたものになっており、効率的なコンサルテーションwebinarを運営できていると感じました。1セクションにあてる時間が少し短いかな?思いましたが、これまでの経験を通してかなり洗練されたものになっていたと言えるでしょう。英語で参加していると時々微かにしか聞こえてこないのですが、同時通訳も十分なスピードと素晴らしい精度で提供されていたようで、こういうことからもコンサルテーションの運営がうまく日本に対応してきていると感じました。このレベルで運営されていればほとんど問題はないでしょう。 あとは、参加者からのもう少し活発な質問やインプットがあれば、というところでしょうか。同時通訳を通しても海外の方に質問やインプットすることは少し気恥ずかしさを感じる日本人気質的なところもあるのかもしれませんが、おそらく問題なのは、個人的な質問やインプットはあるものの会社としての内容や立場がその場で瞬時にまとまらない(あるいは、以前からまとまっていない)とか、先輩や上司を差し置いて質問やインプットすることができない(しかも結局は、先輩や上司は何もしない)とか、うちが質問すると他社から「あいつら分かってないな?」と思われてしまうかも?といった要らぬ心配とか、、、というようなところのように思います。 ASCサイドから、「これについての現状は?養殖企業からどなたか情報いただけますか?」や「これに対する飼料メーカーからの意見や質問は?」というような問いかけが今回もありましたが、そういうことがあればどんどん積極的に質問やインプットをしましょう。それがコンサルテーションであり、コミュニケーションであって、日本語でもそれが可能な環境が整えられ提供されているのですから。 ASC養殖場基準のパブコメに関連したウェビナーと説明会のお知らせ - ASC Japan 3月1日から2か月間、既存の11魚種を統一したASC養殖場基準のパブリックコンサルテーションを実施しています。 ...

養殖サーモン/トラウトの強さ

日本の市場における養殖サーモン/トラウトのパワーバランスとなると良く知らない領域になりますが、ロシアのウクライナ侵攻後は明らかにノルェー産が店頭に並ぶことがなくなってきています。迂回ルートでのロジが整えられてくれば、量的にはある程度の回復が予想されますが、それでもバランスが取れた価格に着地するにはまだ時間がかかるように感じます。一方で、オーストラリア産のサーモン、少なくとも私の周りではこれまではあまり見かけなかったものですが、穴を埋めるように並べられているところもあり、さらにそこには生・冷凍・塩かかわらず国産やチリ産も負けておらずといった勢いで、誰もがノルェー産のニッチをスイッチすることに集中しているようです。他方、このようなことを通して、むしろ、どこ産?といったようなことではなく、養殖サーモン/トラウトといった食品がいかに消費者に強く求められているのかについて改めて認識するのは私だけでなはいでしょう。まったくもって養殖サーモン/トラウト強し、ですね。。。ただ、早く戦争が終わることを願う毎日でありますが。 https://www3.nhk.or.jp/lnews/kitakyushu/20220327/5020010725.html (リンク切れですが残しておきます)