植物からワクチン
「葉緑体工学」という学問分野があるとは知りませんでした。従来のワクチン開発とは全く異なる分野からのアプローチです。遺伝子組み換えにより葉緑体抗原タンパク質をさせ、しかもそのタンパク質が自発的(?)にウィルスのようなの粒子になることでワクチンとしての機能を有することになるとは驚きです。腹腔内に接種した時と経口投与した際に誘導される中和抗体レベルに差があるようですが(腹腔内へのほうが高い)、感染試験では経口投与でもしっかりとした効果が得られています。元の論文でも述べられているように経口投与では多くの魚にまんべんなく均一にワクチンを与えることがどうしても難しくなるものの、一尾一尾に接種する方法(たとえ自動ワクチン接種機であっても)に比べれば、やはり大変手軽でコストも抑えることができます。また、経口投与で効果が得られるということは浸漬への応用の可能性にもつながり、養殖産業の効率化に大きく貢献するポテンシャルがあるものと思われます。経口や浸漬での使用を目的としては他のタイプのワクチンでも研究されていますが、「植物」の分野からこのような新しいタイプのワクチンが加わることで私たちが将来選択できるオプションが増えるということはとても良いことです。副作用(組織癒着、色素沈着など)や動物福祉(ストレス)の観点からも一尾一尾に接種する方法を避ける代替法の価値が世界的に再認識され、すでに開発競争が始まっている今日このごろ。日本発新タイプ植物性ワクチンの開発へ明るい話題ですね。 養殖魚の疾病予防に経口ワクチン 茨城大など、植物利用 茨城大学農学部などの研究グループは、養殖魚の疾病を予防する効果がある経口ワクチンを開発したと発表した。ウイルス由来の抗原たんぱく質を量産する遺伝子組み換え植物を作り、その粉末を餌に混ぜて投与する。従