ウナギの世界ではビックニュースですが、一般の方々の「なにが?」との反応もあってか、業界紙を除けばほとんど取り上げられていません。液状の餌を固形の餌に代えることができたということのインパクトがなかなか伝わらないからでしょう。液状の餌ではウナギの子供(仔魚)に与える際に多くの労力が必要で、しかも水中で崩れやすいことから水質が悪化しやすく、ウナギ仔魚の生育に悪影響を与えやすいものでした。また、原料を混合して液状にする手間と、そのようにして作成した液状の餌を上手く保存しておくことも難しかったと思います。今回の固形の餌、すなわち乾燥配合飼料の開発は、これらの問題を一気に解決した点で画期的です。また、どの魚の種苗生産(仔稚魚を作る過程)でもある程度の規模で商業的に行うには、使いやすく保存性も良い乾燥配合飼料を利用することが欠かせません。完全養殖の達成だけでは得られていなかった商業化へのパスポートが今回の開発された配合飼料であるとも言えるでしょう。基本的に魚の子供は生きて動いている餌や柔らかな餌を好み、動かず硬い配合飼料をなかなか食べてはくれません。食べてもらうことを配合飼料への餌付け(えづけ)と言いますが、どの魚でも苦労することが多いプロセスで、これが不可能では?と思われていたウナギで達成されたことに素直に感動しています。パスポート入手の次はビザ(査証)ですね。ウナギの仔魚が種苗として扱われる稚魚(シラスウナギ)へ移行(変態)するまで180日程度かかります。種苗生産を商業化するには圧倒的に不利な特性ですが、ここを乗り越えるビザをどのように取得していくのか?注目しています。 新たに開発した乾燥飼料でニホンウナギ仔魚をシラスウナギまで育成することに成功