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10月, 2020の投稿を表示しています

情報公開と透明性-サーモン養殖 in カナダのケース

カナダ・ブリティッシュコロンビアのBC Salmon Farmers Associationがサーモン養殖に関わるデータをダッシュボード化し公開しました。養殖業者、サプライヤー、パートナー、サポーターの計70のメンバーからなる共同体が現地養殖産業の透明化と情報の一般化をさらに進めるために作成したようです。生産量8万7千トンの半分が輸出に、残り半分が自国消費となるBCサーモンについては、これまでもサスティナブルレポートやテクニカルレポートの発行を通して消費者とステークホルダーに情報が伝えられてきましたが、視覚化された今回のダッシュボードでいっそうアクセス/閲覧しやすくなり、理解も得られやすくなるのではないでしょうか。ダッシュボードでは魚類養殖産業の重要評価指標である地域経済・雇用への貢献度、二酸化炭素排出量、抗生物質使用量、逃亡魚の尾数などとともに、魚類養殖の重要性がグローバルな視点から紹介されていますので、子供たちや若い人達が養殖魚と養殖産業の現状と将来性について学べるツールとしても役立つものと思われます。 BC Salmon Farmer's Performance Dashboard BC Salmon Farmers | Performance Dashboard

クロマグロ種苗生産 in USA

 Done! ‘Not convinced it can’t be done’: A look inside California’s new bluefin tuna hatchery - Responsible Seafood Advocate San Diego-based bluefin tuna hatchery and feed company Ichthus Unlimited aims to make tuna ranching a more sustainable and reliable option.

レンサ球菌と自家ワクチン

レンサ球菌( Lactococcus garvieae )症に対する自家ワクチンの効果を示した論文です。日本の水産養殖では馴染みがない自家ワクチン(autogenous vaccines、autovaccines)、万能というわけではありませんが、ワクチンがない、ワクチンがあっても効果が薄い、新しい・珍しい病気で早期の対応が必要、血清型の多様化/抗原性の変化で従来のワクチンでは免疫が誘導できないというような場合、海外では製造と使用が認められて実際に成果をあげているカスタム・メイドのワクチンです。自社や近隣の漁場で発生している疾病をターゲットとして、そこで死亡している魚(サンプル)から病原体を分離し、それに対する効果をもつワクチンを比較的素早く、低コストで製造、入手して使えることが魅力です。もちろん各国それぞれで適応のための規則があり、製造・使用までのプロセスも異なりますが、これからの水産養殖の持続性を支えるための重要なオプションの一つと考えられています。自家ワクチン自体の歴史は古いものの、近年は見直しが進んで現在の技術で洗練され、改めて研究と産業化が促進されてきています。今回の論文でとりあげられているはティラピアですが、他の魚種、他の病原体による疾病に対しても自家ワクチンへの期待が高まっており、古くて新しい自家ワクチンが世界規模で水産養殖産業の発展に寄与していくと思われます。一方、日本における自家ワクチンの可能性とポテンシャルはどうなのでしょうか?「日本の法律では認められていません。」だけで議論されずに見解も示されないままであることが、自国の水産養殖産業にとって良いはずがないのは明らかです。 A whole-cell Lactococcus garvieae autovaccine protects Nile tilapia against infection The autovaccine was produced in-house using a bacterial isolate from a diseased fish from the target farm. Three groups of 150 fish each were injected with either 1) an oil-adjuvanted, inactivated whole ce...

温度(水温)療法

魚の生産に携わると必ず遭遇するのが突然の疾病による魚(群)の減耗(斃死)です。もし、その疾病に対する有効な薬剤がなく、しかし直ちに対応しないと急激に魚が落ちると予想されるとき、あなたならどうしますか?陸上水槽、海面生簀、RASなど施設、魚種、魚の成長段階、疾病の種類などの違いによって選択するオプションは異なりますが、今ここでは、陸上施設で海産魚の種苗生産をしていて、ウィルス性神経壊死症(VNN)が疑われる疾病が発生しているとします。このウィルス性疾病は親魚の選別や卵・飼育水の消毒である程度は防除可能ですが100%ではありません。 種苗生産に関わる人の多くがまずの選択肢として思うのは、今回の記事で紹介されている高温(加温、昇温)処理でしょう。熱交換などの設備が整えられていない施設でもVNNの発生履歴がある場合、疾病発生時には一時的にでも魚を処理できる工夫を予め施しておきます。通常は飼育水を加温することなく種苗を生産する海外の現場では特に大切な準備です。 原因不明の疾病に対しても高温処理が効果的に働くケースがあることは昔から知られていました。理由が分からないままに魚が異常に行動しだしたり、斃死がすすんだりする場合にはまずの高温処理でしたが、この記事を読んだ後に調べると、意外にもその効果を科学的に検証して、そのメカニズムに学ぶという方向には研究が進んでいないようです(エビの研究は散見しますが)。恐らくこの記事で述べられているように熱ショックタンパク質の発現調整を介しての免疫誘導が部分的に関わっているのだと思われますが、記事の著者が指摘している通り、ある意味「ワクチン」としても利用可能な費用対効果に優れた技術にまで高められる可能性があり、このような観点からの研究の発展が望まれます。 Hyperthermia can boost innate immune system in juvenile fish - Responsible Seafood Advocate Hyperthermia, or heat shock treatment, is an unconventional approach to pathogen control in fish aquaculture with potential to improve disease resistance.