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飼料原料から環境保護 その2

( チキンミール、チキンオイル、フェザーミールの続き です) 一方で、チキンミール、チキンオイル、フェザーミールのカーボンフットプリントも、製造のためのプロセスヒート(熱)を作り出すための燃料の種類によって、より少なくもなるし(木質チップのみのケース)、より多くもなる(燃料油のみのケース)ことが本論文の感度分析(シミュレーション)で示されています。この研究はポルトガルのレンダリング会社(Soja de Portugal SA)をモデルとして扱ったものですので、国や会社によってはこれと少し異なる結果になることも考えられますが、製造工程に大きな違いはないでしょうからプロセス熱による環境負荷を低減するためには再生エネルギーを利用する(部分的にでも)ことが共通の解になるでしょう。 ちなみに論文によると、1 tのニワトリから0.69 tの鶏肉(ヒト用)がとれ、0.22 tの頭、傷肉、内臓と0.09 tの羽が同時にでてきます。単価はそれぞれ2,000 EUR/t、40 EUR/t、40 EUR/tですので経済価値の99%はヒト用の鶏肉にあることになりますが、せっかく命をいただいているのですから、頭、傷肉、内臓から製造「できる」チキンミールと、羽から製造「できる」フェザーミールを代替原料として利用することは動物倫理や動物福祉をも尊重することにもつながり、今後の水産養殖において良く考えるべき点であると思います。 農林水産省の食鳥流通統計調査から、日本の鶏肉の生産量は200万t 。先の重量比を利用すると63万tの頭、傷肉、内臓と26万tの羽がでてきていると見積もられます。これらの全てを代替原料の製造にまわすと仮定すると、論文からチキンミール、チキンオイルおよびフェザーミールの収率はそれぞれ17%、11%および27%ですので、10万tのチキンミール、7万tのチキンオイル、7万 tのフェザーミールが製造できることになります。日本だけでもこのポテンシャルです。 最近はシングルセルプロテイン、昆虫ミール、藻類オイルなどが代替原料としてが注目される傾向にありますが、サステイナブルな水産養殖を語るのであれば、当然、昔から美味しく命をいただき、常に身近にある原料に対しても業界全体で評価して受け入れる時代に入ってきたのではないでしょうか? Life-cycle assessment of a...

ノルウェーサーモン:競争とブランディング

 ノルウェー食品・漁業・水産養殖研究所(Nofima)が、現在進めているプロジェクトの説明に絡めて、ノルウェーサーモンの他国産サーモンとの競争とブランディングの現状、そしてそれらについての展望を分かりやすく解説しています。常にトップを走ってきたノルウェーのサーモンにも苦労と悩みがあり、しかしこれからもトップを走り続けるために得意の産学官連携で乗り越えていく気満々のようです。 Norwegian salmon is a huge success story – but could it get even bigger? The salmon industry creates thousands of jobs along the coast. Its export value is twice that of all other Norwegian fish combined. Could more unique products add even more value?

飼料原料から環境保護 その1

今回は昨年末からオンラインで発表されているチキンミール、チキンオイル、フェザーミールのライフサイクルアセスメントに関する論文です。 SDGsを念頭にサステイナブルな水産養殖を目指すということは、おのずと地球環境に対するインパクトを低減する方向でオペレーションするということになります。例えばCO2はインパクトを評価するための良く知られた指標ですが、水産養殖における魚の生産の内訳を漁具、漁船、燃料、飼料として、それらから排出される(された)CO2の合計を100%とすると、その大部分の約80%が飼料由来であると報告されています。 したがって、飼料の面からインパクトを低減する努力は重要であり、その効果も大きなものになりうることを認識しなければなりません。それでは、どうすればいいのでしょうか?方法は単一ではありませんが、その一つは飼料に使用されている原料についての理解を深めることです。 ブリ類、タイ類、サケ・マス類の飼料のように、我々に馴染みのある養魚飼料では蛋白源としての魚粉と脂質源としての魚油の配合割合が比較的高く、その由来も以前に紹介したreduction fisheryからのものが多くあります。Reduction fishery由来だからといって全くの「悪」ではありません。資源学的にかなりの厳格さをもって管理されているのと同時に、関わる人々の産業と生活を支えているものも多いからです。しかし、CO2排出に代表される地球温暖化効果や酸性ガス類による酸性化ポテンシャルなどを指標にライフサイクルアセスメントの手法で検討すると、このような由来の魚粉や魚油の地球環境に対するインパクトは漁場往復のための燃料消費などが原因で大きくなります。 一方、この論文で取り上げられているチキンミール、チキンオイル、フェザーミールをみると、そられの地球温暖化効果と酸性化ポテンシャルは魚粉や魚油の概ね50%前後であることが示されています。これはチキンミール、チキンオイル、フェザーミールが鶏肉(ヒトの食用)の生産過程で生じるby-productであること(原料を捕獲しに行っているわけではない)や、それらの原料の鶏肉に対する経済的な相対価値が極めて低いことなどによるためです(鶏肉:2,000 EUR/t;チキンミール・フェザーミール原料:40 EUR/t)。 したがって、これらのことから、魚粉や魚油の使...

パートナーシップ:マダイとAI

  まさに新たな考えと新たなパワーが共に新たな水産養殖を作りだす過程ですね。協働は実は互いの己の内にある敵(おごりや警戒心、猜疑心)が一番の壁(障害)になるのですが、このチームには無関係のよう。パートナーですね。応援しています。 水産養殖技術のウミトロン、愛媛の海でブランド魚を育てる赤坂水産とクラウドファンディングを開始 シンガポールと日本を拠点に水産養殖技術を開発するウミトロンと、愛媛・西予を拠点にヒラメや真鯛の養殖業を営む赤坂水産は10日、「READYFOR」上でクラウドファンディングを開始した。目標調達金額は、60日間で300万円。両社では調達資金を使って、赤坂水産の養殖生簀にウミトロンのスマート給餌機「UMITRON CELL」の最新モデルを設置、この取り組みを通じて養殖魚の成長評価や支援者へのリターンを行