垂直方向の高水温対策:waterborne feeding
前回はマルハニチロさんの水平方向での温暖化対策の紹介でしたが、今回はニッスイさんによる垂直方向の対策が取り上げられています。 タイプによって沈下式、沈降式、浮沈式などと呼ばれる垂直方向への対策は、基本的に生簀が常に水中にある点が特徴です。漁場の水深や潮の流れにもよりますが、例えば表層の水温が30℃でも、その10 m深では2、3℃低い27~28℃台の夏場のブリには理想的な水温をとることができます。30℃を超えてくると高温障害の恐れが強まりますし、この水温に近くても摂餌はしますが、成長に対する無駄が発生したり、健全さが失われ始めたりするようになります。このような高水温の影響を軽減できことは大きな利点ですが、全ての生簀のタイプに共通した欠点として、給餌をする際に水中の生簀から水面に伸びている網の口(くち)を開けて餌飼料を投入するか、水中の生簀を水面浮上させるなどの手間がかかるということがあります。 今回の記事で紹介されているのは、これらの手間をかけずに、水中に沈めたままの生簀内で給餌を行う技術です。Waterborne feedingと呼ばれる給餌方法で、飼料は給餌船から水でホースを通り生簀に運ばれ水中で魚に与えられます。もともとこの技術は、従来の空気(エアー)で飼料を運ぶ方法(airborne feeding)よりもエネルギー損失(電気、温暖化ガスなど)や飼料の物理的損傷(割れ、かけ、粉化)を効率よく抑えることができることと、専ら、アトランティック・サーモンにおいては表層で感染が成立する寄生虫(シーライス)の対策として開発されてきたものです。陸上養殖においても省エネや騒音対策の観点からシステムの洗練化が進められています。 実証試験によって、この給餌技術が温暖化への対応にも生かすことができるか注目です。日本で問題になる寄生虫のなかにはアトランのシーライスと同じような特性をもち感染するものもあり、ブリだけでなく他の魚種への応用も期待できるかもしれません。水を通して飼料を運搬するため、システムの複雑さや飼料からの栄養成分のリーチング(漏れ)などの課題も残っていますが、検討すべき技術の一つであることに間違いないでしょう。 ニッスイ、いけすを常時沈めてブリ養殖 高水温に対策 ...