論文紹介:循環型養殖システムに焦点を当てたヒラマサ養殖(総説)
海外でのブリ類養殖に関するオファーを私が最初に受けたのは、もう10年以上前のことです。当時は困難な点も多くありましたが、その後も彼らはそれぞれのペースでたくましく成長を続けています。海面養殖にとどまらず、ここで紹介されているように循環型陸上養殖(RAS)でも、合計1万トン以上の生産が進行中、あるいは計画されているようです。 各事業やプロジェクトの背景や目的には多少の違いがありますが、主な理由としては、(1)養殖対象としてのアトランティックサーモンからの脱却、(2)主に先進国市場における高付加価値養殖魚(high-value-added fish)への嗜好の多様化、そして(3)多くの失敗にもめげず技術開発と事業化を進めてきたタフさが挙げられると思います。 ちなみに、(1)の「脱却」には、海面養殖におけるライセンスや税金といった管理的要因、水温などの環境要因に加え、アトランをRASで養殖する際にエネルギー需要が想定以上に高かったことによる「転換」など、複数の要因が含まれています。 特に後者についてはあまり語られることはありませんが、多くの機械や機器で構成されるRASでは、それらが発生するエネルギー(熱)により、水温が自然と(自発的に)上昇する方向にあります。これが、低い水温を必要とするアトラン(に限らず冷水性魚類)には不利に働きますので、それならば、ブリのような温水性の魚をRASで養殖してみようと考える人たちも出てくるということです。 今回紹介するこの総説はブリの1種のヒラマサを題材に、成熟、生産、飼料、コスト、育種、生理、疾病などについて、かなり広範囲の情報をRASに絡めて提供してくれています。他の魚種へのチャレンジを検討する際にも、このような基本情報を一度整理し、自分たちの理解、知識、計画の妥当性を俯瞰してみるのは有意義かもしれませんね。 A Review of Seriola lalandi Aquaculture With a Focus on Recirculating Aquaculture Systems: Synthesis of Existing Research and Emerging Challenges This review p...