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新しい膜通気式生物膜(生物ろ過)法

積水化学工業さんが開発した新しい水処理法です。微生物を活用する生物処理に分類されるものですが、従来の方法に比べてエネルギー消費量や汚泥発生量を大きく抑えることができ、また、コンパクトなため省スペースでの設置が可能なようです。 生物処理法は陸上養殖(特に閉鎖循環型のRAS)でも盛んに使われており、そこでは飼育に伴って自ずと発生するアンモニア(例えば魚の尿)を、毒性の低い亜硝酸や硝酸に変え(硝化)、成長と生残を保つことを目的として利用されています。また、水中に硝酸が蓄積しすぎるのも良くありませんので、硝酸を窒素ガスとして大気へ逃がす脱窒(だっちつ)と呼ばれる処理も重要になってきますが、これにも専ら微生物が活用されています。 しかし、これらのプロセスを成立させるためのコストは魚の原価に直接影響し、陸上養殖の成否に大きく関わるものです。システムに必要な土地、設備、担体(ろ材)、空気、酸素、窒素、そして電気に関わるコストは、できるだけ抑えたいところです。もちろん効率を保ったままで。 陸上養殖においても従来法として一般的なものは、移動床式生物膜法(MBBR:Moving Bed Biofilm Reactor)と固定床式生物膜法(FBBR:Fixed Bed Biofilm Reactor)と呼ばれるものです。今回の技術は、微生物を付着させる担体としての平膜が固定化されているようですので、どちらかというとFBBRの新型と考えてもよいのかもしれません。 中空糸のような膜内に酸素を供給するメンブレンエアレーション法を利用した膜通気式生物膜法(MABR:Membrane Aerated Biofilm Reactor)を平膜構造化することで強度を高めるとともに、MABRの特色である単一リアクター内でのアンモニアと窒素の同時除去(硝化と脱窒の同時進行)の効率を高めたこの新しい技術が、陸上養殖にも応用されることを期待しています。 積水化学、省電力で排水処理 積水化学工業は、電力消費量を約75%低減できる排水処理技術を確立した。膜を使って微生物への酸素供給を効率化し、エネルギー使用量を抑える。2026年春に発売する予定で、食品メーカーや化学メーカーの工場などが持つ汚水処理設備...

エルニーニョ再来?

ラニーニャ/エルニーニョ現象という言葉が知られるようになって久しいですが、これらが養殖を含む漁業にも大きなインパクトをもたらすとは(若い頃は)思ってもいませんでした。 海洋研究機構JAMSTECの情報webページで今年の予想について説明されており、現在は南米沖赤道付近の海水温が低いラニーニャ状態に傾いているのが、これから徐々に同海域の水温が高くなるエルニーニョ状態へと遷移していくようです。 しかも今回予想されているエルニーニョは、2023年に観測されたものと類似したものになり、長期化して翌年まで続きそうとのこと。俗にいうスーパーエルニーニョとなって海水温と気温に大きな変化をもたらし、前回の時のように長期にわたって魚の成長や生残に多くの影響を与えることが危惧されます。 長く続いていた黒潮の大蛇行が解消されている状況と、今回予測されているエルニーニョが、温暖化に加えてどのような相互作用をもたらすかについても注視し、早期の対策・対応を目指す必要が出てきているものと思われます。 今夏、エルニーニョ現象による異常気象が発生か? 2024年12月から発生したラニーニャ現象(2025年1月21日既報)は、2025年春には一旦衰退したものの、夏の終わり頃から再発達し、現在も太平洋熱帯域はラニーニャのような状態が維持されています。アプリケーションラボの最新の予測(2026年1月1日時点)では、この状態が、晩冬まで続くと予測しています。その後、早春には、熱帯太平洋は平年並みの状態に戻り、夏にはエルニーニョ現象へと遷移していくと予測しています。

カイコ:経口ワクチン

ワクチンを作るカイコ(蚕)をエサとして、豚の病気を抑制する素晴らしい技術が紹介されています。 正確には、カイコに導入されたウイルスにより、カイコのサナギ(蛹)のなかでワクチンの成分(抗原)となるタンパク質が作られるとのことで、これもすごいことですが、やはり「経口」で効果が得られるということは、本当なら、注射を打たれて痛い思いをするブタにも優しく、注射を一生懸命に打つためヘトヘトになる人間にも優しい技術として、とても価値があるものでしょう。 経口ワクチンは魚(養殖)の分野でも試されてきていますが、他の動物の場合と同様に消化管で分解を受けやすく、注射に比べると免疫を上げる効率に劣るという問題があります。豚や鶏などの陸上動物でもワクチンを注射するのは大変だと思いますが、水の中から取り出して1尾1尾に注射する魚では、より大きな労力が必要になります。また、ワクチンの効果を上げるアジュバントによる副反応が強く、揺れる水面のせいでワクチンを自分の手や指に打ってしまい腫れあがるといった事故も起こります。海産魚では基本的に海上で注射作業を行います。経口ワクチンが実用化されれば、これらの問題は一気に解決されるでしょう。 魚の疾病にも有効なワクチンにつながるのでしょうか。ぜひ、そうであってほしいですね。 九州大学発KAICO、豚用「食べるワクチン」 20億円投じ28年に 九州大学発スタートアップのKAICO(福岡市)は、2028年夏に豚用の「食べるワクチン」の量産に乗り出す。20億円超を投じて福岡市内に量産拠点を新設し、生産能力を年間1000万頭分と現状の100倍に引き上げる。飼育頭数で日本の3倍規模を有するベトナムの養豚市場を開拓し、3年間で売上高10億円を目指す。

魚の特性

哺乳類も肛門を通じて腸で呼吸できる:肺の機能が低下して呼吸が困難になった人を救う画期的な発想は昨年のイグノーベル賞の対象にもなりました。調べると、魚のドジョウの腸呼吸を一つのヒントとした目から鱗な思いつきが始まりの研究のようです。すごいですね。 ドジョウは古くから養殖の対象にされてきた魚で、統計上のはっきりとした数字はでてきませんが、日本を含むアジアにおいて今でもしっかり生産されています。最近では屋内での養殖も進んでいるようですが、従来から休耕田などの露地で飼われることがおおく、時には水中の酸素が少なくなるこのような環境で人(ヒト)がドジョウの養殖を続けてこれたのは、鰓(えら)だけでなくて腸でも呼吸できるこの魚の特殊な能力のおかげともいえるかなと思います。あまりなじみがないかもしれませんが実は(?)美味しい魚で、植物と魚を育てるアクアポニックスの対象魚としても注目されてきています。 ちなみに、世界では鰓だけに頼らない呼吸をする魚が盛んに養殖されています。例えば、ナマズの一種のアフリカナマズはその代表で、鰓の近くにある特殊な器官(ラビリンス器官)から空気中の酸素を取り込めます。このような能力をもつ仲間のナマズを含めると年間の生産量は100万トン以上。世界のタンパク供給の一端を担う動物(魚)になっており、これもすごいことです。 魚の特性が人を支え救うことにつながっている。ほんとに言う事無しで素晴らしいですね 「お尻から呼吸する」腸換気法の安全性をヒトで実証 -重症呼吸不全患者への臨床応用に向けて大きく前進- 東京科学大学(Science Tokyo)総合研究院 ヒト生物学研究ユニットの武部貴則教授(大阪大学大学院医学系研究科教授/同ヒューマン・メタバース疾患研究拠点 副拠点長)、名古屋大学医学部附属病院 麻酔科の藤井祐病院准教授らの研究チームは、腸換気法に用いる液体「パーフルオロデカリン(Perfluorodecalin, PFD)」の単回経肛門投与が、ヒトにおいて安全で忍容性が良好であることを、世界で初めて実施された臨床第1相試験(First-in-Human試験)により明らかにしました。

おしゃれなレインコート

 NHKの「しあわせ気分のスペイン語」で、ガリシア地方にあるレインコートのお店が紹介されていました。女性二人で営まれている小さなお店ですが、海洋プラスチックを素材に彼女たちが作るレインコートのデザインというか彩りがすばらしく、強く印象に残りました。スペインらしい鮮やかな色使いを、二人の感性でさらに現代風に高めているように感じます。 最近ではレインコート姿の人をあまり見かけなくなりましたが、こんなにカラフルで魅力的なものなら、雨の日のエコなオシャレ着として楽しむ人が増えてくるかもしれません。水産業で着られる「合羽(カッパ)」にも多くの色が使われるようになりましたが、彼女たちが生み出すような鮮やかな彩りのものもあっていいかもと思います。 衣服や小物では、有名ブランドからも、海洋プラスチックや漁具・船具をリサイクルしたプラスチックを素材としたものが出されていますが、エコを意識してか落ち着いたデザインや色使いのものが多いような気がします。彼女たちのように、もっと鮮やかで元気なものがあって良いかもしれませんね。 NHK「しあわせ気分のスペイン語 (19) おしゃれなレインコート」 ▽雨が多いガリシアの暮らしに欠かせないレインコート▽海で回収したプラスチックをリサイクル!環境に優しくデザイン性も高い▽アロウサ島のレインコート会社を立ち上げたの二人の女性▽ Recycled Raincoat Raincoat designed in Galicia and made with spun fabric from recycled plastics collected from the sea and printed with a graphic design by Ïk. Studio.

秋刀魚の養殖

なにに影響されたのか、今年のサンマは大ぶりで漁も良く、手に届きやすい価格帯になっています。しかし、以前に比べるとまだまだ高めであり、温暖化などの環境要因によって漁獲量が下降トレンドのなかで変動していく可能性が高い以上、この魚の養殖魚としてのポテンシャルを探ろうとする動きがでてくることは不思議なことではないのかもしれません。 養殖でポピュラーなブリやマダイは海水中でバラバラに浮遊する卵を産みますが、サンマはお互いに引っ付き合いって海藻など漂流物に絡みつく卵を産みます。専門的には、前者のような卵を分離浮性卵、後者を粘着卵あるいは付着卵と呼びますが、このように、卵の時期からブリやマダイと育ち方が異なるサンマでは、飼育や生産の方法にどのような特別な注意が必要になのでしょうか。研究が進むにつれて、さまざまな面白いことが明らかになっていくに違いありません。 養殖さんまは苦いか塩つぱいか、それとも美味しいか? 楽しみですね。 マルハニチロ、サンマ養殖に成功 出荷サイズまで飼育 マルハニチロは9日、サンマの試験養殖に成功したと発表した。2024年6月にサンマの卵を出荷目安である100グラムを超える成魚まで育てた。サンマは不漁が続いているものの、事業的規模の養殖にはまだこぎ着けていないという。同社は商業出荷できるよう、大量生産に向けた精度を磨いていく。

論文紹介:循環型養殖システムに焦点を当てたヒラマサ養殖(総説)

海外でのブリ類養殖に関するオファーを私が最初に受けたのは、もう10年以上前のことです。当時は困難な点も多くありましたが、その後も彼らはそれぞれのペースでたくましく成長を続けています。海面養殖にとどまらず、ここで紹介されているように循環型陸上養殖(RAS)でも、合計1万トン以上の生産が進行中、あるいは計画されているようです。 各事業やプロジェクトの背景や目的には多少の違いがありますが、主な理由としては、(1)養殖対象としてのアトランティックサーモンからの脱却、(2)主に先進国市場における高付加価値養殖魚(high-value-added fish)への嗜好の多様化、そして(3)多くの失敗にもめげず技術開発と事業化を進めてきたタフさが挙げられると思います。 ちなみに、(1)の「脱却」には、海面養殖におけるライセンスや税金といった管理的要因、水温などの環境要因に加え、アトランをRASで養殖する際にエネルギー需要が想定以上に高かったことによる「転換」など、複数の要因が含まれています。 特に後者についてはあまり語られることはありませんが、多くの機械や機器で構成されるRASでは、それらが発生するエネルギー(熱)により、水温が自然と(自発的に)上昇する方向にあります。これが、低い水温を必要とするアトラン(に限らず冷水性魚類)には不利に働きますので、それならば、ブリのような温水性の魚をRASで養殖してみようと考える人たちも出てくるということです。 今回紹介するこの総説はブリの1種のヒラマサを題材に、成熟、生産、飼料、コスト、育種、生理、疾病などについて、かなり広範囲の情報をRASに絡めて提供してくれています。他の魚種へのチャレンジを検討する際にも、このような基本情報を一度整理し、自分たちの理解、知識、計画の妥当性を俯瞰してみるのは有意義かもしれませんね。 A Review of Seriola lalandi Aquaculture With a Focus on Recirculating Aquaculture Systems: Synthesis of Existing Research and Emerging Challenges This review p...