投稿

7月, 2024の投稿を表示しています

天然魚と養殖魚の調和

漁獲と養殖を融合しての管理指導を始めなければならない時期が過ぎているのに、そのまま突き進んでいるような状態が続いています。 天然の漁獲が増えれば養殖が見放され、逆に、漁獲に頼れなくなると養殖様様(さまさま)で戻ってくるけど、再び漁獲が回復すると、引き波のように去っていく。この従来からの原理が、天然と養殖の両方の新しい市場とビジネスの創生を妨げています。 日本のクロマグロ水産業は天然と養殖の両者で調和と互いの頑健性をもって成り立つべきであり、国はそれに資する施策を積極的に打つべきです。記事の後半でも触れられている養殖用の種苗(稚魚)についても同様で、天然と人工(ふ化場で飼育された)種苗の両立・共栄を捨てる方向に国が動いているのが残念な現実です。 将来的にこのようなことが続いていかないように、自分なりの方法で伝え続けています。 *ちなみに、記事には「クロマグロは1キログラム太らせるのに15キログラムのエサを必要とする。・・・」と述べられていますが、この15キロは生餌の湿重量ですので、ブリとサーモンの数字と同じ基準でみるために、生餌の水分を一般的な数字の70%と仮定すると、15×(100%-70%)=4.5となり、意外と低い値になります。 漁獲規制でクロマグロ回復、資源量12倍 養殖出荷は減少 クロマグロの数が回復傾向にある。日本では「本マグロ」とも呼ばれる高級品で、国内外ですしネタとして親しまれている。過去に日本の乱獲などで数が激減し、2015年に国際的な漁獲規制を導入して保護してきた。資源量の増加を受け、日本は漁獲枠の拡大を主張している

補正増肉係数(compensated FCR)

 シェアしておこうと思わされる場面にたまたま遭遇しましたので、今回は再度、FCRに関する投稿です。少し長くなると思いますので2回に分けます。 養殖では常にeFCR(econmic FCR:経済的増肉係数)に注目すべきですが、そのFCRだけに頼ることで誤った(時にはもったいない)判断を下してしまう場合があります。国内外で、しかも、事業規模に関わらず、そのような状態にある生産者がいます。 細かな数字を見るのは時間がかかることですので効率が悪いと思われがちですが、そういうところに大切なヒントが隠されていることがあるのも事実です。記帳や集計のシステムにAIが組み込まれてくると、「効率が悪いな」となまけ心を感じる間もなく、注目すべき点を指摘してくれると期待しています。 さて、出荷や水揚げタイミングまでのeFCRには、 eFCR=飼料購入量/出荷重量 eFCR=給餌量/水揚げ重量 eFCR=給餌量/(出荷時バイオマス-池入れ時バイオマス) eFCR=給餌量/(水揚げ時バイオマス-池入れ時バイオマス) などのバリエーションがありますが、これらの分母にはエサを食べながらも途中で亡くなってしまった魚やエビは含まれていません。 そこで、その重量を計算に入れたbFCR(biological FCR:生物学的増肉係数)というFCRを求め、平たくいうと、エサがどれほど有効に魚やエビの体が育つために利用されていたのかを検討する必要がでてくる場合があります。 例えば: bFCR=給餌量/((水揚げ時バイオマス+死亡個体バイオマス)-池入れ時バイオマス) しかし、「死亡個体バイオマス」は: 死亡個体バイオマス=死亡個体1の重量+死亡個体2の重量+・・・+死亡個体nの重量 で厳密には求められるものであり、実際の生産フィールドでこれを達成しようとすると、生簀や池を24時間モニターして、魚やエビが1尾(個体)死亡するごとに取り揚げて重量を測定しなければならず現実的ではありません。 そこで: 死亡魚バイオマス=死亡個体数×平均死亡個体重量 で代用します。 「死亡個体数」を得るには、生簀や池を24時間モニターする必要はなく、ルーチンの業務で死亡個体を取りあげ計数すれば良いですし、また、必要に応じて適宜: 死亡個体数=水揚げ個体数-池入れ個体数 で算出します。 ちなみに、魚では実際の取揚げ死亡個体数と...